国木田独歩の「運命論者」
「牛肉と馬鈴薯」や「武蔵野」で知られる国木田独歩だが、ミステリー風のおもしろい短編を書いている。
それが「運命論者」だ。
語り手の「私」が、鎌倉の海岸を散歩中、不思議な青年を見かける。
青年は砂浜に酒瓶を隠しており、散歩に来てはそれを掘り出して飲んでいた。
「私」は青年に興味を持ち、いろいろ話すうちに、以下の様な身の上話を聞かされる。
青年は数年前に入り婿のような形で結婚し、妻・妻の母と三人で暮らしている。
しかし、義母は青年の顔を見ると、恐怖の表情を見せるようになる。
彼は不審に思い、義母に問い詰めるが、恐怖の理由を答えようとしない。
やがて彼は独自に調査を開始するが、その結果明らかになったのは、恐ろしい真実であった・・・
独歩がこの作品で描きたかったのは、運命の恐ろしさだろうが、
上記のようにまるでミステリーのような筋立てになっており、読んでいてゾクゾクするような
サスペンスを備えている。
時々、純文学作家のミステリーがアンソロジーの形でまとめられるが、この作品はなぜか含まれない。
しかし、自分がそういう編集をするとしたら、この作品は是非収録したいと思う。
(そんな機会はないだろうけれど)
牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (新潮文庫 (く-1-2))/国木田 独歩
- ¥540
- Amazon.co.jp
- ※「運命論者」を収録しています。
スティーブンソンの「自殺倶楽部」
5年前の今頃に、スティーブンソンの「自殺倶楽部」を読んだ。
ある人物が、死にたいが自殺する勇気のない人間たちを集めてクラブを作る。
そして定期的に会合を開き、トランプをする。
Aというカードを引いたものは殺す役目を、Bというカードを引いたものは殺される役目を、 それぞれ割り当てられる。
そして一定の期間内に、殺す側の人間は殺人を実行しなければならない。
大体こういう筋立てで物語が進んでゆくが、最期に正義の味方が現われて、この忌まわしいクラブは 壊滅させられてしまう。
スティーブンソンは「宝島」や「ジキルとハイド」の作者だが、なぜかこの作品はあまり知られていない。 本もあまり刊行されていないようで、私も図書館で古い文庫本を借りて読む他なかった。
自殺クラブというアイデアや強烈なサスペンスなど、かなりおもしろい作品だが、後半に正義の味方が 現われたことで、古典的な勧善懲悪ドラマになってしまったのが残念だ。
あまり話題に上らないのは、この辺りに原因があるのかもしれない。
もし解決役が登場しなければ、一級のホラー小説になった可能性もあったと思う。
また、近年流行した集団自殺を予言したような内容で、いろいろ考えさせられる。
- 新アラビア夜話 (光文社古典新訳文庫 Aス 2-1)/スティーヴンスン
- ¥600
- Amazon.co.jp
※「自殺倶楽部」は、「新アラビア夜話」に収められています。
「ギララの逆襲」観賞記
先日見てきました。
結論から先に書くと、「ダメだ、こりゃ!」でした。
一言で言うと、「気の抜けたビール」。
国際政治の風刺としても中途半端で毒がないし、怪獣映画としても見せ場がない。
「タケちゃんマン」の映画バージョンとしても、つまらない。
とにかく全てが中途半端。
良かったのは、主演の加藤夏希がかわいかったことくらい。
加藤ファンには楽しめるかもしれない。
見に行く前にネットで感想を調べたが、やはり低評価だった。
ただ、「往年の特撮ファンには楽しめるかも」という意見があったので、少し期待していたのだが、
「往年の特撮ファン」の自分でも、楽しめなかった。
あんまり酷評を続けると、営業妨害になるかもしれないのでこの辺でやめるけど、
これから見に行く予定の方は、期待しないで肩の力を抜いて見るのがよいと思います。あ~あ。(@_@)