スティーブンソンの「自殺倶楽部」
5年前の今頃に、スティーブンソンの「自殺倶楽部」を読んだ。
ある人物が、死にたいが自殺する勇気のない人間たちを集めてクラブを作る。
そして定期的に会合を開き、トランプをする。
Aというカードを引いたものは殺す役目を、Bというカードを引いたものは殺される役目を、 それぞれ割り当てられる。
そして一定の期間内に、殺す側の人間は殺人を実行しなければならない。
大体こういう筋立てで物語が進んでゆくが、最期に正義の味方が現われて、この忌まわしいクラブは 壊滅させられてしまう。
スティーブンソンは「宝島」や「ジキルとハイド」の作者だが、なぜかこの作品はあまり知られていない。 本もあまり刊行されていないようで、私も図書館で古い文庫本を借りて読む他なかった。
自殺クラブというアイデアや強烈なサスペンスなど、かなりおもしろい作品だが、後半に正義の味方が 現われたことで、古典的な勧善懲悪ドラマになってしまったのが残念だ。
あまり話題に上らないのは、この辺りに原因があるのかもしれない。
もし解決役が登場しなければ、一級のホラー小説になった可能性もあったと思う。
また、近年流行した集団自殺を予言したような内容で、いろいろ考えさせられる。
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※「自殺倶楽部」は、「新アラビア夜話」に収められています。