【概要】
 

今回は、子どもの「読書」と「成績向上」の関係について、海外や日本の研究論文を根拠に取り上げてみようと思います。実際に読書量の多い子が成績も高いのか、データを踏まえて確認していきましょう。そして、どうすれば読書習慣を身につけられるのか、親としてどんなサポートができるのかを考えてみたいと思います。

 

子どもの読書が成績向上にどのようにつながるのか 

 

まず、読書習慣が子どもの成績向上につながると言われる理由を解説します。読書量が増えると語彙力や理解力が向上し、学校で学ぶ教科書の内容もスムーズに吸収できるというのが大きなポイントです。さらに、読書を通じて幅広い知識を得たり、思考力や想像力を鍛えたりすることが、結果的に学力のベースを上げると考えられています。

 

 読書と学力の深い相関

 

読書習慣と成績の関係を示す研究は、海外でも数多く行われています。代表的なものとして、イギリスの教育・社会調査を専門とする研究チームが実施したSullivan & Brown(2013)の調査があります。彼らは約6000人の青少年を対象に、読書量と学力(特に語彙力や読解力)との関係を追跡調査しました。その結果、10歳から16歳にかけて定期的に読書をする子どもは、同年代に比べて語彙力・読解力のテストスコアが平均して14.4%高いというデータが得られています。
(出典:Sullivan A, Brown M. (2013). Social inequalities in cognitive scores at age 16: The role of reading.
https://dera.ioe.ac.uk/16067/1/1_sullivan_brown_2013_effect_of_reading_on_cognitive_scores.pdf

 



この研究では、読書を通じて語彙力や読解力だけでなく、数学の成績も向上する傾向があることが確認されました。つまり、日常的に読書を楽しむ子は国語以外の教科にも好影響を及ぼすというわけです。加えて、この効果はどのような家庭環境の子どもにも共通して見られた点が興味深いところ。読書という行為自体が、社会的背景にかかわらず学力アップに有効だと示唆されています。

 

 OECD PISAデータから見る読書と学力

 

国際学力調査PISAを行う経済協力開発機構(OECD)も、読書の習慣と学力との関連を指摘しています。PISAの過去の報告書では、毎日読書を楽しむと回答した生徒は、ほとんど読書をしない生徒と比べて読解力テストで50ポイント程度高いスコアを示す傾向が確認されました。
(出典:OECD. (2019). PISA 2018 Results.
https://www.oecd.org/pisa/publications/pisa-2018-results.htm

 



この50ポイントというのは、PISAで言えばおおよそ学力が1年分相当向上すると言われるくらいの差だとも報告されています。つまり、読書習慣があるかどうかだけで1年分もの学力差が生じる可能性があるということです。

 

日本の研究が示す読書の効果

 

日本でも、子どもの読書と学力に関する研究がいくつかあります。文部科学省が行う全国学力テストの分析結果の中にも、「週に数回以上読書をする子」のほうが読解力において高得点を取る割合が高い傾向が示されています。さらに、ある自治体の教育委員会が実施した独自調査では、小学4年生から小学6年生の子どもを対象にした読書時間の長さと国語テストの関連を分析したところ、1日30分以上本を読む子は読解問題の正答率が平均6〜8ポイント高いとのデータも得られました。

 

加えて、読書量が多い子は作文や文章表現の力も向上しやすいという報告もあります。実際、書く力と読む力は表裏一体で、たくさんの文章に触れるほど語彙選択や表現力を自然と身につけるとされます。こうした言語スキルが全教科のベースとなることを考えると、子どものうちから読書習慣を育む意義は大きいと言えるでしょう。

 

読書が成績に与える具体的なメリット

 

ここまでに紹介した研究やデータを総合すると、読書が成績向上にもたらすメリットとしては以下のようなポイントが挙げられます。

  1. 語彙力の増強
    →日常生活であまり使わない言葉や表現に出会うことで、単語の意味や使い方を自然に学習する。語彙力が豊富になるほど、教科書の内容理解がスムーズになる。

  2. 読解力の強化
    →物語や説明文を読みこなす中で「要旨をつかむ力」「論理構成を把握する力」が養われ、国語だけでなく他教科の文章問題にも対応しやすくなる。

  3. 思考力・想像力の発達
    →読書中には登場人物の心理を推察したり、物語の展開を予想したりするため、自然に思考力や想像力が育まれる。算数や理科の問題解決にも応用しやすい。

  4. 集中力の向上
    →本に集中して長時間読み続ける習慣があると、勉強にも集中しやすい。読書はインターネットやゲームよりも視覚情報が少なく、自分の頭でイメージを広げる作業が必要なため、集中力を鍛えるのに適している。

  5. 学習意欲の刺激
    →読書を通じて興味のあるテーマを見つけることで、「もっと知りたい」と学ぶ意欲が高まる。結果的に学校の授業への意欲や興味も深まるケースが多い。

 

親ができる読書習慣のサポート策

 

ただ、「読書が大事なのは分かるけど、子どもが本を好きじゃない…」という悩みを抱える家庭も少なくありません。ここでは、わが家でも試してみて効果があった方法をいくつか紹介します。

  1. 子どもの好みを尊重した本選び
    →最初は漫画でも写真集でも図鑑でも、とにかく子どもが興味を持ちやすいものを選ぶことが大切。慣れてきたら少しずつジャンルを広げる。

  2. 読み聞かせや共同読書
    →小さいうちは親が読み聞かせをするのが効果的。ある程度大きくなっても、同じ本を親子で読んでみて感想を共有すると読書が楽しみやすくなる。

  3. 本のある環境づくり
    →リビングや子ども部屋に本棚を置いて、いつでも手に取りやすい状態にしておく。図書館へ定期的に足を運ぶのもおすすめ。

  4. 読書記録やブックレポート
    →読んだ本の感想や心に残った場面をメモする習慣をつけると、読解力や文章力がさらに伸びる。楽しいエピソードを家族にシェアしてもらうのも良い。

  5. 親自身が読書を楽しむ
    →子どもは親の様子を敏感に感じ取る。親が楽しそうに本を読んでいると、「読書って面白そうだな」と自然に思うようになる。

読書量と成績向上の限界はあるのか

 

もちろん、読書をたくさんすれば全ての子どもが飛躍的に成績アップするというわけではなく、個人差があります。どうしても体を動かすことや音楽・アート系の活動が好きな子もいますし、読書量だけで学力が決まるわけではありません。
しかし、全体的な傾向として、一定の読書習慣を身につけた子が学力で優位に立ちやすいという事実は国内外の研究から繰り返し示されています。極端に読書を嫌う子の場合は、まずは絵本や雑誌などライトなものから入ってみて、「活字に抵抗を感じない状態」を作ることが一歩目になるでしょう。






 

まとめ:読書は成績向上の大きな要素

 

ここまで海外(Sullivan & Brown, OECD PISAなど)や日本国内の研究データを交えながら、子どもの読書と成績向上の関係を紹介してきました。統計的にも読書習慣のある子のほうが学力テストで高得点を取る傾向があり、1日30分の読書でも国語読解力や他教科の理解にプラスの効果が見られるというのは、親として非常に心強いデータだと思います。

もちろん、勉強にはさまざまな要素が関わってくるため、読書だけですべてが解決するわけではありません。それでも、読書によって得られる語彙力や理解力、思考力、そして学習へのモチベーションといった効果は、試験やテストの点数だけにとどまらず、子どもの知的好奇心を育て、将来の可能性を大きく広げるはずです。


わが家でも、最初は子どもが好きなキャラクターの絵本や雑誌から始めてみました。慣れてきたら図書館で少しレベルの高い児童書を借りてみたりして、ちょっとずつでも読書時間を増やすように工夫しています。読むのが苦手な子でも、親が一緒に楽しんであげると意外と本の世界に引き込まれていくものだな、と感じます。

 

子どもの成績アップに悩んでいる方は、まずは身近な読書からアプローチしてみてください。ゲームやスマホに比べると地味に見えますが、本を読む習慣をつけることは一生の財産になると私は信じています。大切なのは「本を好きになるきっかけ」をどう作ってあげるか。その第一歩として、家族みんなで読書を楽しむ時間を少しでも設けてみることをおすすめします。

 

参照・引用文献

  1. Sullivan A, Brown M. (2013). Social inequalities in cognitive scores at age 16: The role of reading.
    https://dera.ioe.ac.uk/16067/1/1_sullivan_brown_2013_effect_of_reading_on_cognitive_scores.pdf

  2. OECD. (2019). PISA 2018 Results.
    https://www.oecd.org/pisa/publications/pisa-2018-results.htm

これらの研究や統計データを参考に、ぜひお子さんの読書習慣をサポートしてみてはいかがでしょうか。学力向上だけでなく、想像力や表現力の向上、親子のコミュニケーションの充実など、読書にはたくさんのメリットが待っています。自分の子どもが夢中になって本を読んでいる姿を見ると、親としても嬉しくなりますよね。どうか焦らずに、少しずつ読みやすい本からチャレンジしていってくださいね。