こんにちは。 札幌出身・アメリカ在住の皮膚科専門医/美容皮膚科女医の日景聡子です。

 

最近、アメリカでの契約書を読み直す機会がありました。

細かいところまで英語で読むのは大変で…

 

しかも、専門用語(車とか、家関係は特に)がわからないのです。

 

でも、細かく書いてあるところにこそ、大事なことが隠れていたりします。

 

チラシなどでもそうですよね。

隅っこに小さく書いてある文字、誰も読んでなさそうなところに例外が書いてあって、

ほとんどの人が例外だったり(笑)

 

実は、化粧品でも同じことがあります。

 

化粧品のパンフレットなどに、こんな言葉が書いてあるのを見たことがありませんか?

「…の成分が肌のすみずみまで浸透*し、キメを整えます。」

 

何気なく読んでいる文章の中にある「*」、お気づきですか?

この「*」の先を辿っていくと…

 

「*角質層まで」「*角層まで」

 

と書いてあることがほとんどです。

 

これ、どこまでかというと…

 

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この一番上の層までしか作用しないということです。

厚さ約0.02mm。サランラップと同じくらいの厚さですね。

 

「え、浸透って書いてあるから、もっと奥深くまで入っていくと思ってた…」

とショックを受けるお友達が多数ゲッソリ

 

化粧品パンフレットのイメージ図も、誤解を生じさせる一因なのかもしれません。

 

 

「化粧品の作用が及ぶ範囲は、角質層まで」

という薬事法の規定があるんですよね。

 

 

(医薬品などは別です。外用薬は、きちんと効きますよね。)

 

ただし、角質層のバリアが壊れている場合は、

顆粒層よりも下に成分が入っていくこともあります。

 

「じゃあ、いいんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、

アレルギーを引き起こすリスクと引き換えになります。

 

皮膚の有棘層のあたり(上の図を見てくださいね)には、

ランゲルハンス細胞という、免疫をつかさどる細胞がいて、

皮膚表面からの異物を認識する働きをしています。

 

ここで化粧品の成分が異物として認識されると、

体が反応するようになり、アレルギー、つまり化粧品かぶれを起こすことになります。

 

前回、手荒れのところでも同様のお話をしましたよね。

皮膚のバリアが乱れると、アレルギーを起こすリスクが高まります。

 

角質ケアをし過ぎたり、乾燥肌がひどかったりすると、

皮膚のバリアが壊れてしまっていて、化粧品かぶれを起こしやすくなります。

 

かつての私の皮膚も、オイルクレンジングやらケアのし過ぎで、

乾燥肌がひどい状態でした。

そこに何種類も化粧品をつけていたのですから、不調になるのは当然ですよね。

 

化粧品の有効成分と言われているものは、残念ながら薬とは違い、

その効果はマイルドであると言わざるを得ません。

 

そもそも角質層までの浸透を目的とした設計なので、

化粧品の主な目的は保湿、と考えた方がシンプルで良いと思います。

私が保湿と日焼け止め、と言っているのは、これが一番大きな理由です。
 

これまた言葉をよーく見るとわかるのですが、

「シミを消す」とか「シワを治す」とか「たるみを改善」とかは書いていないはずです。

「予防」とか「目立たなくする」という表現にとどまると思います。

 

これも、薬事法(今は薬機法)や化粧品のガイドラインで決められているからです。

 

確かに、乾燥によるちりめんじわは保湿により改善しますが、

それ以上の大きなシワなどは、やはり医療の力を借りないと難しいです。

 

しみの一部は、時間とともに消えていくものもありますが、

(炎症後色素沈着という、日焼けや火傷の後に一時的に皮膚が茶色くなる反応です)

メラニン色素自体を壊さないと消えないシミもあります。

 

上の図の基底層に近い部分にあるメラニンや、

基底層より下の真皮にあるメラニンを消すためには、

やっぱりレーザーや光治療の力が必要になってきます。

 

(ちなみに、真皮にあるメラニンは青く見えます。蒙古斑もその仲間です。

実際は「アザ」に分類されるのですが、

多くの方がシミだと思っている場合も多々あります。)

 

化粧品でどこまでができて、どこからができないのか、

見極めながら商品を選びたいですね。

 

いつも最後までお読みいただき、ありがとうございます。 
 
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