札幌出身の皮膚科専門医/美容皮膚科女医のSatokoです。
前回の「美は文化」の記事に関連して、
勉強していて面白いなと感じることがあります。
それは、ボトックスやヒアルロン酸のスタンダートな打ち方が
アメリカと日本では違うということです。
(ちなみに、ボトックスは表情を作ったときにできるシワに、
ヒアルロン酸は無表情の時にも存在するシワ←ほうれい線など に注入する治療です。)
例えば、目のボトックスの場合。
日本では「目尻のシワ」を改善させるイメージが強いです。
微笑んだ時の優しいシワ。
↑目尻のシワが多い人は若い時にモテた証拠とか、そういう話を聞きますが、
医学的には迷信です(笑)
ところが、アメリカでは、目尻はもちろんですが、
目の下の部分にも頻繁にボトックスを打ちます。
下瞼の外側から1/3くらいのところと言えばいいでしょうか。
もちろん、日本の教科書にもそこへ注入する方法は書いてあるのですが、
標準的な打ち方としては紹介されていません。
アメリカ人はプロフィール写真を撮る時に、
「に~っ」と歯を見せて笑う(grin)ことが多いんですよね。
写真を撮る時にcheese(チーズ)と言った時の「チー」の口を作ることから、
cheesy grinとも呼ばれています。
↓これです。
日本人のプロフィール写真は、どちらかというと微笑む感じだったり、
少し歯を見せるくらいのsmileの方が多いのではないでしょうか
アメリカ人のような思いっきり歯を見せた写真は、大人では馴染みがない気がします。
というわけで、アメリカ人は、cheesy grinを作ったときにできる目の下のシワも
とても気にするわけですね。
ちなみに、歯の矯正への意識もとても高いんだそうです
長女の小学校で毎年配られるYear bookという冊子があります。
全員の顔写真が一人ずつ載る、卒業アルバムっぽい感じの冊子です。
先生方を見ると、ほとんどの方がcheesy grin。
子ども達も、思いっきり笑っている子が多いです。
ミシガン大学皮膚科の医局で見た研修医一覧表の顔写真も、みんな歯を出してにっこり
私の高校の卒業アルバムを見ると、先生方はみんな口を閉じた真面目な顔で…
日本の卒業アルバムで歯を思いっきり出して笑うと、
何となくふざけた印象になってしまうと感じるのは私だけでしょうか。
こういった文化の違いが、美のスタンダードを作っていくんでしょうね
その他にも、頬へのヒアルロン酸の入れ方が違ったりして、とても勉強になります。
美容大国アメリカで行われている様々な治療を間近で学べるのは、
日本とは違うスキルを見られるとても貴重な経験です
アメリカで学ぶことを通して、英語で情報を取っていくハードルは低くなりました。
美容の機器や薬剤は海外製のものが多く、
自分で学会に参加して手に取って試してみたりする必要がありますし、
新しい技術を勉強するときにアジア圏のドクターと英語で交流することもあるでしょう。
ただ、美容室の話にも通じますが、
帰国後に日本で日本人の方を治療していくことを考えると、
日本人の感性、悩み、好みを熟知した日本人のドクターから教えてもらうことが
いかに大切かということも実感しています。
美容皮膚科は一般皮膚科と違い、患者様の主観・満足度が重視されるからです。
そういった意味では、美容室と似た部分が多いと感じています。
技術だけではダメで、お互いの相性とかセンスとか、目に見えないものも大切ですよね
日本で治療経験を重ね、得ていく手ごたえの中に、
アメリカで学んだことを上手に取り入れることで、
治療の選択肢を広げたり、自分のオリジナリティを出せたらと考えています。
ちなみに、cheesy grin、私もやっていますが、自然な笑顔にするのが難しく…
どうしても、「いーっ」(←「に~っ」じゃない)と引きつった表情になってしまいます。
そして、勉強し知識がついてくると、
自分の顔のアラが見えてきてしまうのも悲しいところです。
cheesy grinの顔をした私にも、目の周りのシワが
ミシガン大学に勉強に行くだけでなく、私も患者になった方が良さそうですね。
↑アメリカの秋の風物詩、カカシ(scarecrow)
カラス(crow)を怖がらせる(scare)という意味からはかけ離れた、フレンドリーなカカシです。
どことなく懐かしく、優しい表情に、思わず買ってしまいました
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