では、今回から『俺の人生』編を書いていきたいと思います。前シリーズの最後にて『辻寺 泉』から連絡を受けた『日暮 琴里』は…。新たなシリーズが開幕しましたが、書いてる奴が同じなので雰囲気としての大きな変化はなし。なので、いつものようにお気軽にどうぞ❗️
『今の俺が送る毎日は違う奴のものなんだ。だから俺は戻りたいんだ―。』
もし今いる自分が違う存在だと知ったら、どうなってしまうのだろうか。きっと絶望のような感情が芽生え、日が経過すればするほど心に深い影を落としていくだろう。特に『自分と違う人物がこの日々を送るはずだ。』と思ってしまえば負の感情は止まらなくて。やがて自暴自棄になったりもする。それほどまでに本来の自分は異なる人物という事実は心に闇を芽生えさせるものだった。
そんな人物の中に1人の男も含まれていた。男は一見すると少し若々しく、力強さも感じさせる。人付き合いも決して悪くなさそうな人物だ。だが、その表情には時々、暗く険しい色を含ませていた。今の自分は本来の自分ではない事を知っていたから…。
(…やってられない。本当の俺じゃない毎日を過ごすなんて…。やってられない!)
いつだったかに不意に聞いてしまったのは、同じ日に同じ施設で生まれた『もう1人の自分』がいる。だが、そこで何かが起きた事で『もう1人の自分』と入れ替わってしまった事だった。そして入れ替わった状態で各々の自宅へと帰還。そこで育てられ今日まで生きてきたという事だったからか。今日まで生きてきた時間が偽りのように思えた男は、これから過ごすであろう日々も嫌になっていく。その感情は日が経過すればするほど強まるばかりで。遂に『犯罪を起こしても構わない。』とも考えてしまうほどになっていた。
一方その頃。現世に白い髪の少女…『日暮 琴里』は来ていた。刀剣男士『へし切長谷部』を伴ってだ。普段よりも僅かに険しい表情を浮かべながら…。
「…しかし泉様からの急な呼び出しとは…。一体、何なんでしょうか?」
「さぁ…?何かがあって呼び出したんだろうけど、その内容は正確には教えてくれなかったし。ただ…何となくだけど『彼女自身からの呼び出し』っていうのとは少し違う気がするのよね。」
「主…。」
「まぁ、行ってみれば分かる事だしね。早く済ませましょう。」
「かしこまりました。何があってもお供し続けます。」
「ええ。ありがとう、長谷部。」
記念祭での襲撃事件や、後に起きた『古酒 満造』と『道重 香津代』の実行犯達の脱走事件。それらの出来事は後味が良くなくても一定の収束を迎えたのだが、その矢先に急に担当者の『辻寺 泉』から連絡があった。しかも通話等ではなく直接会う事を求められたのだ。その時の雰囲気からいつもと違う事。そもそも辻寺自身の用事ではない事も何となくではあっても感じ取っていた為か。普段以上に日暮は警戒していた。それでも傍らには自分の事を大切にしてくれる長谷部がいるからだろう。警戒はし続けていても少しだけ肩の力を抜いて待ち合わせ場所である役場近くの喫茶店向かうのだった。
こうして向かった先で辻寺と予定通りに会えた日暮。だが、そこで告げられた事に思わず戸惑ってしまう。辻寺からこう言われたから…。
「…ごめんね。『ある人』から頼まれて呼び出したの。依頼の為に。」
「『ある人』って…。」
「お久し振りね、日暮さん。」
「…っ。」
何となく通常の『審神者』業務に関する用事での呼び出してはいない。同時に辻寺の言葉でその予感が当たっていたと知る事が出来た。それでも言葉に続くように現れた者の姿に日暮は息を呑む。今の『審神者』の業界内で最も高い地位を持っている『宗像 治子(むなかた はるこ)』だったから…。
そんな日暮達だったが、当の宗像はもちろん気にした様子はない。むしろ日暮と長谷部の姿を改めて見つめると告げた。
「あなたの活躍はいつも聞いてるわ。元気そうで何よりよ。」
「いえ。挨拶もあまり出来ていなくてすみません。」
「あら。そんなに固くならないで?あなたを大切にしている人が相手なのだから。…ちゃんとあの『へし切長谷部』を刀剣男士として扱えてもいる、あなたの事をね。」
「…ありがとう、ございます。」
穏やかな笑みを浮かべながら宗像は話しかけてくれたが、日暮の様子は常以上に固くなってしまう。両親を亡くして『審神者』になるまでの間や就任する際となった後。更に長谷部の扱いについても日暮が望むようにしてくれた。言葉通り大切にしてくれている相手だと分かっていてもだ。相手が目上の存在だった。何より年齢も含めて思考等が人間離れしている事も知っていたから…。
一方の辻寺は日暮が固まってしまっている事に当然気付いていた。それと同時に状況を好転させたかったからか。宗像にこう声をかけた。
「宗像さん。依頼の話を…。」
「ああ、そうだったわね。久し振りに会えたからつい挨拶が長くなってしまったわ。ごめんなさいね?」
「いえ…大丈夫です。私の方こそ…会えて嬉しいですから。」
「ありがとう。」
辻寺の言葉で本来の目的を思い出せたようだ。我に返ったらしい宗像は本題を切り出さなかった事を詫びる。そして1つ息を漏らすと告げた。
「『日暮 琴里』。あなたに特別任務を言い渡します。…『ある人物』の事を調べなさい。今日から1ヶ月の間、霊力の度合いだけじゃない。その人柄も含めたものを少しでも多くの事を。…どんな手段や存在を使ってでも。」
「…っ。」
「一体、誰を…?」
そう言い渡してくる時は自然と他の『審神者』や政府の人間達と対峙するような心境にもなっていたのだろう。直前の、久し振りの対面に喜びを示していた際とは少し異なり雰囲気は固さを含ませていた。それは事件や出来事等と向き合っている日暮が息を呑むだけではない。日々、脅威と闘い続けている戦士であるはずの長谷部ですら刀に手をかけるほどに警戒してしまう。だが、体を強張らせながらも2人は宗像の依頼を引き受けるつもりだからか。改めて詳細について尋ねるのだった―。
…というわけで、シリーズ第1話目でした。
新シリーズ開幕❗️そして同時に新しい人物の登場です。ちなみに定番になってきましたが名字に使われている漢字で察した人がいるかもしれませんが、『像』の文字が入っている『宗像 治子』は重要人物になります。なので、立場的にも今後も出てくる…かと思います。…あくまで予定ですけど。そこの部分もよろしくお願いしますね🙏
それでは、また~🖐️