では、『海に棲むのは』編の続きを書いていきたいと思います。前回、自分を助けに海に入ってきた『日暮 琴里』がやられてしまうという、絶望的な光景を『宮城 美亜』は目の当たりにしてしまい…。妄想を煮詰めている『小説もどき』、そして基は存在しても捏造を練り込ませた分野となる『二次創作』の一品です。良ければご賞味下さい❗️

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ…こっちの方は任せたから。後はさっき話した通りにお願いするわね?」

そう言い残すと彼女…『日暮 琴里』は海に入っていった。友人の『宮城 美亜』を助けに向かったのだ。だが、向かった先となる海は直前の出来事と相まって、明らかに異常だと分かる状態になっているからか。付喪神で歴史を破壊しようとする脅威に立ち向かえるはずの『刀剣男士』ですら恐怖のような感情が湧いてしまったせいで、簡単に動く事が出来ない。現に宮城と日暮の友人である鳥居の本丸にいる打刀の大倶利だけではなく、今の主が海に呑み込まれ苦痛を感じているはずの短刀・乱もただ見守るだけになってしまっていた。

 

そんな彼らの恐怖や不安の感情は更に大きく膨らんでしまう事になる。海に入った日暮が一向に浮上してこない。むしろ宮城の姿や気配もほぼ感じられない状態が継続しているのだ。宮城が未だ助けられていない状況である事を否応なしに察してしまった乱の気分は浮上してこない。それは自身の手入れを鳥居が行ってくれたおかげで傷が癒えたというのに苦しげな様子のままでいるほどで…。

(っ、駄目だ。チャンスを逃さないように集中しないと。)

海に入る少し前に日暮が告げてきたのは宮城を助ける為の作戦で、乱にも協力を求めるものだった。だが、それはタイミングが重要である事も含んだ内容でもあったからだろう。その時のやり取りを過らせる事で乱は何とか我に返る。そして失敗しない為にも、彼は主がいるであろう海を真っ直ぐ見つめるのだった。

 

 

 

一方その頃。未だ宮城が呑み込まれた状態の海では乱が危惧していた事が当たってしまっていた。『海蛇のような波』を生み出している存在が宮城を離さなかった事。彼女を助けにきた日暮を痛め付け、瀕死の状態にまで追い詰めていたからだ。しかも日暮がほぼ動かなくなると、それが野望を叶える為の好機だと捉えたようだ。その事を示すように宮城を改めて捕らえると更に海の深い所へ引きずり込もうとした。

 

そんな時だった。日暮の口角が僅かに上がったのは。そればかりか『ある物』を仕込んでいた背中から引き抜くと呟いた。

『頼むわよ。…浦島虎徹。』

「…。」

触れながら心の中で呟けば、その姿は1振の刀…脇差から青年へと姿を変えていく。明るい髪色が特徴的な刀剣男士…『浦島虎徹』へとだ。だが、その髪色や容姿を含め明るい性格の者が多いのに、今の彼は無言な上に瞳も虚ろという様子をしていて。親しみ易いと感じさせる姿とは真逆のものだ。それは意識をほぼ失いかけている状態の宮城ですら我に返させるほどの恐怖を与えてしまったのだろう。現に彼女は目を見開くと、自身の知っているのとは異なっていた浦島を見つめ体を強張らせていた。

 

だが、当の浦島の状態がそこから変化する事はない。むしろ宮城や今の主であるはずの日暮にまで攻撃をしそうな雰囲気を漂わせ続けている。それでも日暮の意思は微かに残っているのか。ただ単に現状、脅威になっているのは宮城を捕らえている『何か』だったのか。脇差を改めて握ると身構えもする。そして…。

「…消えて。」

『…ッ!?』

1つ呟き霊力をまとった刀を振れば、水中であっても衝撃波が発生。それは迷う事なく自分達へと向かってきたからだろう。宮城を捕らえていた『何か』は動揺しながらも彼女を解放した。だが、付喪神からの攻撃に叶うはずもなく『何か』は損傷。しかも海中は自分達の領域の為に本来なら回復も早いはずだというのに、それが一向に進んでいない事にも気付いた為か。『何か』の中に荒々しい感情が芽生えていた。

『オノレ…我ラノ野望ヲ…。似タ者ニ、ナリカケテイルクセニ…。許サヌ…許サヌゾ!』

「…。」

そう漏らしてしまうほどに『何か』は荒ぶるが、刀剣男士は付喪神の中でも『人の為に、その想いに応える為に生まれた。』という存在である影響なのだろう。『審神者』の宮城を捕らえていた『何か』に対し、始末する対象と見なしたらしい浦島からの一撃をまともに受けてしまう。それも浦島の攻撃は浄化の力も含まれていた為に復活までには相当の時間を要する事にも気が付いてしまったのか。『何か』は不満を漏らす事は出来ていたが、少しでも早く復活しようと動きを停止させるのだった。

 

こうして何とか宮城の解放には成功した。だが、安心ばかりもしていられない。少なくても留まり続ける事は出来ないのだ。この場所が海中である事。彼女を捕らえていた『何か』が停止しているのは一時的なものだった事。何より今の浦島にとって他に強い力が宿っている『審神者』も標的にしまう可能性が高かったのだ。実際、一時的でも『何か』の制圧に成功した事を認識すると、宮城だけでなく自分の主であるはずの日暮の方へと向きを変換。先ほどよりも遅いとはいえ、2人に向かってきたのだから…。

(っ!?どうして…。)

自身の本丸に浦島はいるが、今の彼は知らない姿だった。日暮の所の彼を含めてもだ。それは宮城の体を石のようにさせてしまうほどの動揺を生み、現に彼女の体は益々硬直させた。それでも日暮が手を引き泳ぎ続けてくれたおかげだろう。確実に彼女達は浮上していった。

 

そして…。

「主さん!」

『っ、乱さん…。』

海面が近付き明るさにも気が付いた頃に、大切な刀の1振で刀剣男士の声が聞こえてきた事。更に声の主は海に飛び込み、日暮と同じように海上へ引いてくれているのにも気が付いて。今度は安堵により宮城の意識は再び遠ざかっていく。それは地上で待っていた鳥居達の手も借りながら引き上げられ砂浜に寝かされても気付けないほどの深い安堵だった―。

 

 

 

 

 

 

 

…というわけで、シリーズ第12話目でした。

今回は宮城が助けられた時の事を一気に書いてみました❗️ちなみに最初に考えた際には『乱藤四郎』も日暮と一緒に宮城の所へ向かわせようかとも考えました。ただ海上近くで宮城の事を強く引っ張り上げてくれそうな存在が欲しかったので、乱にこういう動きをして貰ったのです。

あと日暮の『浦島虎徹』がおかしくなったのには、ちゃんと理由があります。それと宮城を救出する為の作戦や、向かっている間の鳥居達との事も含めた話は後日改めて書くつもりです。なので、待っていて下さると嬉しいです🙏

 

それでは、また~🖐️