では、『裏舞』編の続きを書いていきたいと思います。『棺布 鷹生』達の野望が込められた記念祭の予行演習が行われる事になり…。気付けばクリぼっちどころか新年も迎えていました。ですが、作風も含めて通常運転が続きますので、今年もよろしくお願いします❗️
男…『札元 和也』は緊張していた。記念祭という国を上げての行事にて警護を任されたからだ。腰に弾を込めた、一定の殺傷能力を持つ銃を携帯した状態で…。
(…俺に撃てるのだろうか?『祭りを邪魔する者』として…。もし相手が『彼女』だったら?…本当に引き金を引けるのか?)
現役の刑事である為、一般の人よりも拳銃を携帯する機会がなくはない。むしろ分野としては『その道のプロ』という扱いを受けるであろう立場。更に札元の射撃の腕も悪くはない。そもそも今日は記念祭の予行演習なのだ。いくら本番当日を想定している緊迫した状況であっても本来ならばこんなに緊張する必要はないだろう。それでも弾を含め渡された拳銃等が本物だった事。更に上司の『宇洞 紳助』が先日言っていた事が尾を引いているせいか。普段よりも札元の体は強張り続ける。重さに押し潰されそうな感覚に襲われていた。
だが、一方で楽しそうな様子の者がいた。札元の学生時代の友人で彼に好意を寄せている。更に今回の記念祭では立場上、衣装や小物の考案と提供も行っている『錦織 都』だ。自分の家が記念祭に深く関われた。そればかりか幼馴染みで親友の『鈴風 月乃』が舞い手として記念祭に参加するのだ。緊張だけではない高ぶりを感じるのは当然だろう。何より立ち位置等から警備を行う札元の近くにいられるのだから…。
(…ああ。…やっぱり素敵です。)
私生活に近い時の彼には会っている。更に最近では様々な事件を介していたとはいえ接触する機会も増えた。つまり学生時代の仲間達の中では一番、札元を見る事が出来ていた。それでも好きな人と会う事というのは『何回でも叶って欲しい。』と望んでしまうもの。特に今回は警備をする彼の姿が見られる。しかも練習とはいえ親友の活躍も見る事が出来るのだ。それらが相まって都の気持ちは高ぶる。だが、場の雰囲気が張り詰めている事も分かってはいて。結局、興奮を表に出さないようにしながら過ごすしかないのだった。
そんな時だった。緊張と妙な興奮が混ざった空気が数人が攻めてきた事で壊されたのは。それも警備をしていた空間の地上からではない。建物の屋根を伝うような形でだ。そして空気を壊した者達の内、小柄な狐面を被った人物を背負った男が勢いよく進行。既に舞を躍り始めていた月乃に向かっていったのは…。
「…っ、させない!」
2人が舞台に上がりそうなのを察した札元は立ち塞がる形で飛び出す。それだけではなく携帯していた拳銃を構え引き金も引いた。
だが…。
「…っ!?」
忠実に発射された弾は担いでいた男ではなく、彼に担がれていた小柄な人物の着けていた狐面をかすった。おかげで僅かな衝撃を受けた狐面には亀裂が入り崩壊。担がれていた人物の顔を明るみにさせる事が出来た。だが、そのせいで記念祭の予行演習に侵入し、舞い手まで狙っていた者の正体が分かってしまったからだろう。札元は固まり息も呑んでしまう。狐面が取れた事で、その下が好意を抱く『日暮 琴里』だと判明したから…。
「…へぇ、ちゃんと撃てるじゃない。本番もその調子で警備、頑張りなさい。」
「日暮…。」
「ただ、目の前の光景だけに注意すれば良いってもんじゃない。…上に気を付けなさいよ。」
「っ、上って…。」
「じゃあ…祭りの本番でね!」
「…っ、待て!日暮!!」
引き金をちゃんと引けるかを密かに悩んでいた事を見破っているかのような言葉を告げられた。そればかりか意味深な事まで言われたのだ。札元は動揺する。だが、日暮が答える様子はなく、更に再び男に背負われたかと思うと風のように駆け抜け姿も消してしまったせいだろう。札元だけでなく他の警備も動けなかった。
こうして記念祭の予行演習は僅かな間、緊迫した状況にもなったが何とか終える事が出来た。それは日暮も同様だ。もっとも『襲撃』という部分だけで見れば表面上は成功とも失敗とも言えないものだったが…。
「…それで?確認出来たかしら?」
「はい!舞が始まった途端に一部でも空に穴が空いたようになりました!舞が中断されたら、それ以上の変化はありませんでしたが…。」
「俺も映像、撮っといたぜ!篭手切江の言う通り舞が中断されると変化が止まるっていう箇所も含めてな。『あの舞は危ない』って証拠にはなると思う。…信じて受け入れてくれるかは分からないけどな。」
「そう…。ありがとう。まぁ、あとは受け入れてくれる事を願うわ。…そんな顔しないで?長谷部。」
『舞により異常事態が起きる。』という事を証明する為に行ったのが今回の襲撃だった。それは乱暴な手段でもあったが、おかげで撮影も含めて確認する事も出来たのだ。動いてくれた刀剣男士『篭手切江』と『薬研藤四郎』へ日暮はお礼の言葉も口にした。だが、その傍では『へし切長谷部』が浮かない表情もしていたからか。思わず声をかけると、彼は続けた。
「すみません。あの男から守る事が出来なくて…。」
「あの発砲の事?あれはわざと受けたのよ?彼に襲撃者の正体を知って貰う事と、記念祭の舞についての警告する為に。だからあなたは主命を果たしているわよ?長谷部。」
「主…。ありがとう、ございます。」
「というわけで…行きましょうか。やる事はまだ沢山あるし。」
過去のせいで日暮に害が及ぶ事に恐れを感じているのは分かっていたからだろう。彼へ微笑みを向ける。そして長谷部の目にいつもの光が戻っていくのを確かめると、安堵の息を漏らしながら歩き始めるのだった―。
…というわけで、シリーズ第6話目でした。
今回は記念祭の予行演習のについて主に書いてみました❗️ちなみに日暮が連れている刀剣男士は純粋に私が書き易い人達が中心になります。一応、『今シリーズは彼を活躍させたい!』という理由もありますけどね。やっぱり薬研とかは書き易い方なので出演させる機会が多いです。…お疲れ様ね、薬研💦
それでは、また~🖐️