では、『海に棲むのは』編の続きを書いていきたいと思います。前回、『海蛇のような波』に呑み込まれるという絶望的な状況に陥ってしまった『宮城 美亜』は…。世間ではあっという間に終わったGWに嘆く人もいそうですが、こちらでは日常が過ぎただけです。それぐらい時間的感覚がない奴が書いてますが、皆さんは好きなタイミングで見て下さいませ❗️

 

 

 

 

 

 

 

「極端に『水に溺れ易い』というものには意味があるそうよ。大きく分けて言えば『徹底的に拒絶されるぐらいに嫌われている場合』と『引きずり込まれてしまうほどに好かれている場合』の2つの意味が。特に霊力を持つ人、『審神者』の場合は尚更そういう意味が強いと思うわ。」

宮城が幼馴染みを通して知り合った『その者』は自分よりも年下であるはずなのだが、両親を殺害されるという悲劇を経験していた影響か。はたまた容姿やまとう空気から『人と異なる存在』を思わせる者だからか。否応なしに自分達よりも生きている時間が圧倒的に長いと感じてしまう者だった。そして『異質な者』だと思ってしまった事で避けるような態度を取ってしまった時期があったのだ。だが、その者が『人と異なる存在』である事だけではなく、何か重いものを背負っているとも気付いてしまった事。何より見抜く力が優れている事も分かったからだろう。気が付けば彼女…『日暮 琴里』の事を受け入れていたのだった。

 

そんな日暮に対しある時、全く泳げない事を漏らした宮城。水辺、特に海が好きなのに潜れないばかりか泳げないせいで悔しい想いを抱いている事も含めてだ。すると宮城のその嘆きと姿

を目の当たりにし、密かに調べていたようだ。溺れ易い原因について大きく2つある事を口にする。更には付け加えるように、こうも続けた。

「あなたは…水に、特に海の水に好かれ過ぎている。それも『海に棲むもの』だけど魚達みたいな生き物ではない存在に。溺れたあなたを引き上げようとした時に海中に黒い影や人の形をした何かがいたし、それらがもっと深い所へ引きずり込もうとしているのが分かった。だから間違いではないと思う。」

「っ、何で…。」

「…その理由までは私も分からない。だけど気を付けた方が良いと思う。1人で水辺に行かないように。もし行く時には溺れてもすぐに助けて貰えるように潜れて泳げる人と一緒にする、とかね。」

全く泳げない理由の詳細は日暮も分からなかったようだが、その原因が恐ろしいものだと知ってしまったせいか。家柄だけではなく能力でも『審神者』への適性を既に認められ自覚もしているぐらいに霊的な存在等に対する耐性や多少の慣れがあったにも係わらず、妙な寒気を覚えてしまったのだろう。宮城は無意識に腕を擦る。だが、それほどまでの恐怖を覚え同時に信じたくはないと思っても、告げてきた相手が日暮だった事。何より話を聞かされてからも度々、水による怖い目というのに遭ってしまっていたのだ。最終的には日暮からの助言の通りに行動するようになったのだった。

 

 

 

それから軽く10年以上が経過して。宮城の脳裏にあの時の日暮の言葉達が過っていた。警告されていた海中を現在、1人で漂いながらだ。もっとも現状に至るまでには不可抗力とも言えるようなものでもあったのだが…。

(でも…きっかけは私、ですし。琴里さんだけじゃなくて茜ちゃんにも嫌な思い出を残してしまいました…。やっぱり悪いのは私自身、ですわよね…。)

呑み込まれる直前に一瞬とはいえ見えてしまった友人達の姿も頭を過ったからだろう。既に引きずり込まれた後だった為に想像も含まれてもいるが、友人達の絶望しているであろう表情も過った宮城は胸を締め付けられているような感覚に襲われる。そして胸の苦しみに気付いた辺りから意識が遠ざかりながらも体が不思議と動かせなくなってきている事にも気が付いてはいたが、それは『物の喩え』というのではなかったらしい。その事を表すように海の底から黒いもや状の複数の『何か』が伸びてくると、宮城の手足を含め体を次々と拘束。自分達の住処と思われる海の更に深い所へ沈めるべく彼女の体を引いていったのだ。

『ヤッタゾ、ヤッタゾ!遂ニ彼女ヲ手ニ入レラレルゾ!!』

『サァ、早ク招キ入レナケレバ。我ラノ世界ニ!』

そんな声を何処からか響かせながら…。

 

そうして本格的に生者の世界とは切り離された場所へ連れて行かれそうになっていた時だった。海上から宮城に向かって何者かが勢いよく迫ってきたのは。しかも相手は生者の世界から来た者で、その影響を受けたのだろう。ほぼ意識を失っていたはずの宮城だったが、自分へと迫ってくる者を視覚出来るぐらいには我に返れたのだ。もっとも体はまだ動かせなかったが…。

(琴里、さん…。ごめんなさい、私…!)

ただ見つめる事しか出来なくても日暮には謝罪も含め自分の想いは通じていたようだ。同じく無言のままではあったが、応えるように頷いてくれた。そして捕らえられている宮城を引き離すべく更に接近すると、術を発動するつもりなのか。人指し指と中指を立てたのを自身の口元に持ってくるのだった。

 

だが、『人と異なる存在』であっても地上と海では勝手が違うからか。はたまた『何か』が持つ宮城をようやく捕らえる事に成功した為に手放したくないという意志が相当に強かったのか。日暮は素早く迫ってきた『何か』による攻撃を受けてしまう。まだ宮城の体にすら触れる事が出来ていなかったというのにだ。しかも攻撃は1回だけではなく次から次であり、更に『何か』は触手のような動きになりながらも締め付けるばかりか尖らせた先端で切り付け貫くようなものも行ってきたせいだろう。日暮の体はあっという間に傷だらけになり動かなくなってしまった。

『ククク…。コレデ邪魔スル者ハイナクナッタナ。』

『アア。トイウワケデ…今度コソ行コウ。我ラダケノ世界ヘ。』

「…っ。」

日暮のおかげで何とか我に返る事が出来たものの、元々宮城は水に好かれ過ぎている体質な上に既に体力も奪われているのだ。当然、抵抗らしい抵抗も出来ずに『何か』に海底の更に深い所へと、再び引きずり込まれ始めてしまう。それにより宮城の瞳の光はほぼ消えてしまうのだった―。

 

 

 

 

 

…というわけで、シリーズ第11話目でした。

今話は『宮城 美亜』が溺れてしまう体質の理由について書いてみました❗️いくら人から教えて貰ったりしても泳げない、もしくは溺れてしまう…という人は少なからずいると私は思っています。そういう人は『体の動かし方が間違っているから。』とかが理由だったりするそうですが、これは物語ですので思い切った内容を原因として書いてみたのです。『そういう解釈をしたんだ~。』とか思いながら適当に見流して下さいね🙏

 

それでは、また~🖐️