9.最後はファーストクラス〜帰国へ その3
食後はアカデミー受賞で話題のミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」を旅客機では大きな23インチモニターで見る。
舞台となるロスアンジェルスの色彩が綺麗に表現され、ストーリーも感情移入できるもので、私にとって忘れ得ぬ作品の一本になった。続いて大好きな「フォレスト・ガンプ」も見てしまった。映画を見終わったタイミングでKさんが、
「何かお持ちしましょうか」
と声を掛けてくれた。私はかねてから気になっていた「味噌ラーメン」と「ガーデンサラダ」をお願いした。
程なく運ばれた「博多一風堂コク極まる味噌大地」と名付けられた味噌ラーメンは、超有名店とのコラボ機内食だが、インスタント感が強いのは空の上では致し方ないところ。
味替え用にバターとコチュジャンが添えられていたので、少しずつ加えて食べると味の変化が楽しめた。サラダには酸味の強いドレッシングを掛けていただきお腹をすっきりとさせる。
食べ終わったタイミングでKさんが、
「お隣の席にベッドをお作りします」
そう言って通路を隔てた1G席をベッドに仕立ててくれた。私は生まれて初めて飛行機内のベッドで横になり、心地良い薄手の羽毛布団にくるまり3時間程ぐっすりと眠る。
目覚めて自席1Kに戻り、炭酸水を飲みながら再び映画を見た。2本見終わった辺りで、
「あと2時間ほどで成田に到着いたします。何かお召し上がりになりませんか」
Kさんが声を掛けてくれた。あまりに快適なので気付かないうちにワシントンを離陸してから10時間以上経っていたらしい。メニューを見て、ハンバーガーをお願いした。
「ハンバーガーは写真を見ると小さめの様ですから、コーンスープもお持ちいたしましょう。食後はフルーツもいかがですか」
彼女のおすすめに従うことにした。
「申し訳ございません。ハンバーガーが意外と大きいものでした」
運ばれたハンバーガーはバーガーキングのワッパーを少し小さくしたサイズで、なかなかのボリュームだったのだ。
続いて運ばれたコーンスープは昔からのオーソドックな味で美味しくいただく。頃合いを見て運ばれたフルーツの盛り合わせはオレンジ、パイナップル、メロンなどが美しくカッティングされたプレゼンテーションだった。
食後にコーヒーを貰った時にしばらくKさんと話をした。
彼女にアメリカのどこを回ったか聞かれ、簡潔に3都市の感想を述べた。ファーストクラス担当は搭乗客とコミュニケーションを取る時間がとても楽しくて、やりがいがあるとのことだった。会話の最後にサービスが心地よくゆったりと過ごせたことに感謝を述べた。
成田到着数十分前にリラックスウエアを搭乗の時に着て来た服に着替えた。ウエアは記念品として持ち帰れるとのことで、Kさんが綺麗に畳みケースに入れて持たせてくれた。
成田空港に定刻15時25分に到着。2人のCAさんに見送られて、真っ先に機外に出る事が出来た。
そう言えば、搭乗してから他クラスの乗客と全く顔を合わせることが無かった。やはりファーストクラスは別世界なのだろうと痛感した。
9日振りに日本へ入国し、バゲージのターンベストへ行くと、私のスーツケースは既ベルト上を回っていた。ファーストクラスのサービスは最後まで素晴らしいもので、本当に貴重な経験をしたと思う。
自宅までの帰路は京成スカイライナーを使った。こうしてアメリカ還暦一人旅は多くの思い出とともに幕を降ろした。