久しぶりに雪が舞う中の通勤となった。こんな日が年に2~3回はある。雪は夜半も続くようだ。明日の朝が思いやられる。
菅原道真の七言律詩に雪の朝に通勤するサラリーマンの悲哀を感じさせるものがある。以下、原文および現代語訳を記載する。
「雪中早衙(そうが)」 菅原道真
風送宮鐘繞漏聞 風は宮鐘を送りて暁漏聞こゆ
催行路上雪紛紛 行を催す路上に雪紛紛たり
稱身着得裘三尺 身に称(かな)ひて着ること得たり裘(かわごろも)三尺
宜口温来酒二分 口に宜(かな)ひて温め来る酒二分
怪問寒童懐軟絮 怪しびて問う寒童の軟絮(なんじょ)を懐くかと
驚看疲馬蹈浮雲 驚きて看る疲馬の浮雲を蹈むかと
衙頭未有須臾息 衙頭(がとう)未だ須臾(しばら)くも息うこと有らず
呵手千廻著案文 呵手(かしゅ)して千廻(ちたび)案文を著す
(拙・現代語訳)
寒風の中に響いてくる宮中の鐘の音が出仕の時刻を告げ、出勤をせきたてる路上に粉雪が舞っている。
身の丈にぴったり合った三尺の皮衣を着て、口あたりの良い少量の酒で体を暖める。
寒い中でも元気な童子を見ると、軟らかい綿を懐に抱いているのではないかと怪しみ、雪路でもひたむきに働く馬を見ると、浮雲を踏んでいるのではないかと驚いてしまう。
そんな妄想も束の間、どうせ役所に着けば、一時の休憩を取ることも無く、悴(かじか)んだ手を何度も息で暖めつつ、公文書の原稿に取り掛からなければならないのだから。
これを、生成AIと共作で現代版に本歌取りしてみよう。結果は以下の通り。
「通勤哀愁」 Copilot&流離の翻訳者(共作)
電車鳴音宣出勤 電車の鳴音出勤を宣べ
平台舞雪身骨凍 平台雪舞い身骨凍る
薄外套絹巾纏身 薄き外套絹巾を身に纏い
熱缶珈琲口喉潤 熱き缶珈琲口喉を潤す
紅顔童子嫉妬生 紅顔の童子は嫉妬を生み
血気青年溜息漏 血気の青年に溜息を漏らす
到公司無休息時 公司に到れば休息の時無く
悴手息温打鍵盤 悴手を息で温め鍵盤を打つ
(現代語訳)
電車の鳴音が出勤の時刻を告げ、ホームに舞う雪が身骨を凍らせる。
薄いコートとマフラーを身に纏い、熱い缶コーヒーで口と喉を潤す。
元気な子供たちを見れば妬ましく感じ、血気盛んな青年を見れば溜息が出る。
会社に着けばひと時の休息も無く、悴(かじか)んだ手を息で温めつつキーボードを叩く。
とりあえず完成したが、まだまだ改善の余地がありそうだ。