漬物は昔から大好きだ。私の地方では、私が子供のころは自宅で「ぬか床」を維持管理するのが当たり前だった。私の実家では祖母の代から母の代まで「ぬか床」が受け継がれていた。母が元気な頃は実家に戻ると美味しい「ぬか漬け」をいつでも食べることができた。
翻訳会社で勤務していた頃、設計部門の先輩の方が「ぬか床」ならぬ味噌とヨーグルトで漬けたキュウリの漬物を持ってきて食べさせてくれた。「ぬか」の風味は無いが十分に発酵して美味しかった。
一人暮らしのころ、この味噌とヨーグルトに挑戦してみた。まあまあの出来だったが、水分が結構出て維持管理が難しく、結局放り出してしまった。
家内と暮らすようになって「ぬか床」に再度挑戦した。大きなタッパに「ぬか」を入れて塩や鷹の爪、昆布、山椒などの薬味を入れて発酵させてはみたものの…、結局挫折した。美味しい「ぬか漬け」を食べることはなかなか難しい。
今は、月一で通院している病院近くの「黄金市場」で露店で売られている「ぬか漬け」を思い出したように買っている。またサバやイワシをぬか味噌を入れて炊いた「ぬか炊き」も時々買う。いずれも実に美味い。
先日の日経新聞の【春秋】欄にこんな記事があった。
「…その漬物が苦境にある。帝国データバンクが先日発表したレポートによると、今年1~9月の漬物店の倒産・廃業が過去最多のペースだそうだ。」
漬物店の倒産・廃業の理由は
・消費者の嗜好の変化
・不安定な野菜価格
・経営者の高齢化、という「三重苦」に加えて
・法改正で厳しくなった衛生基準を満たすための設備投資が重荷になった、と分析している。
同コラムには、種田山頭火の以下の言葉が引用されていた。
「山のもの海のもの、どんな御馳走であっても、最後の点睛はおいしい漬物の一皿でなければならない。」