英語の迷い道(その97)-菅原道真「臘月獨興」-太宰府天満宮 | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

今年も残すところ後僅かとなったが、寒さは一段落し年末年始は暖かいらしい。

 

陰暦12月を「臘月(ろうげつ)」と呼ぶが、「臘(ろう)」とは冬至後の第三の戌(いぬ)の日の中国の祭を指し、猟の獲物を先祖百神に供える行事を意味する。

 

以下に紹介するのは、天神、菅原道真(845-903)が十四歳の時に作ったと言われる漢詩である。

 

受験生道真のユーモアが感じられる詩である。十四歳と言えば今なら中学二年生くらいか。勉学に飽きて黄昏れることもあるだろう。その寸暇にも漢詩を作るとは風流な人である。さすが天才は凡人とは違う。

 

 

「臘月獨興」(臘月(ろうげつ)に独り興(こう)ず)         菅原道真

 

玄冬律迫正堪嗟           玄冬律(げんとうりつ)迫り正に嗟(なげ)くに堪えたり

還喜向春不敢賖           還りて喜ぶ春に向かはんとして敢えて賖(はる)かならざるを

欲盡寒光休幾處           尽きなむとする寒光幾ばくの処にか休(いこ)はむ

將來暖氣宿誰家           将に来たりなむとする暖気誰が家にか宿らむ

氷封水面聞無浪           氷は水面を封(ほう)じて聞くに浪無し

雪點林頭見有花           雪は林頭(りんとう)に点じて見るに花有り

可恨未知勤學業           恨むべし未だ学業に勤むることを知らずして

書齋窓下過年華           書斎の窓の下に年華(ねんか)を過ぐさむことを

 

 

(拙・現代語訳)

冬の寒さが極まり今年も残り少なくなったが、それを嘆いたところで仕方がない。その一方で季節は確実に春に向かっており、その訪れは決して遥か先のことではないのだ。

いずれ尽きるであろう寒さが終わるのはどれくらい先のことなのか。また、いずれ訪れるであろう春の暖気は、今どの辺りに留まっているのか。

しかし外を見れば、氷は水面を閉ざし波の音すら聞こえず、林の梢は雪に覆われまるで花が咲いたように見える・・・・・・(*_ _)。

あっ、しまった!また勉学に励むことを忘れて、書斎の窓から景色を眺めて詩歌など詠んで黄昏れてしまった。そんなことじゃ駄目なのわかっているのに・・・。