外山滋比古著「90歳の人間力」に面白い話が出ていた。「コンビニ」に関するものである。英文学・言語学が専門なだけあって、蘊蓄(うんちく)に富んだ話である。
ある初老の婦人が店へ駆け込むようにコンビニに入ってきて、店員をつかまえて、「トイレはどこ」ときいた。
店員はひとこと「トイレはお貸しできません」と撃退した。彼女はスゴスゴ出ていった。店の不親切に腹が立った。
……(中略)……
年をとると、トイレが近くなる。我慢ができない。それで、したい外出も控えるという人が少なくない。
コンビニができて、トイレを貸してくれるときいて、そういう高齢者がどんなに喜んだか知れない。
そのコンビニで断られたら、途方にくれる人がいるにちがいない。コンビニはやさしさに欠ける、サービスの精神がない。
コンビニはアメリカから渡来した商法だが、英語の本場・イギリスでは、コンビニエンスには、トイレ、公衆便所の意味があることを知らないだろう。
コンビニはトイレを貸さなければ、すこしもコンビニではないのである。
(外山滋比古著「90歳の人間力」p.88-89から引用)
Convenience を英和辞典で引いてみると、確かに「3⦅英正式⦆公衆便所」という記載があった。
コンビニにはいつもお世話になっている。コロナの緊急対応時を除いて、トイレを貸してもらえなかったことはない。
ただ、一つしかないトイレを長時間占有する輩がいるのは、いつも困ったものだと思っている。