新・英語の散歩道(その72)-遠い日の記憶②-絵皿のトラウマ | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

子どもはわけもわからないものに恐怖心を抱くものだ。

 

 

幼い頃、私を可愛がってくれた伯父・伯母の家の座敷には赤い牛が描かれた絵皿があった。焼き物だったのかガラスだったのか。とにかく濃い青を背景に赤い牛が描かれていた(写真はネットで拾ったもの)。

 

どういうわけか私はその絵皿が怖かった。私が遊びに行くと伯父・伯母は絵皿を裏返しにした。それでも絵皿の存在が怖かった。結局、伯父・伯母は絵皿を何処かへ片づけてしまった。

 

すると今度は絵皿が置いてあったサイドボード自体、また終いには座敷に入ること自体が怖くなった。「座敷には赤い牛がいる」というトラウマができ上ってしまったようである。

 

このトラウマから抜け出したのは小学校の高学年くらいの頃だ。考えてみれば普通に牛肉を食べるようになった頃かも知れない。

 

私が中学に上がった頃、伯父・伯母の家の赤い牛の絵皿は元の位置に戻されていたが、もう絵皿に恐怖心を抱くことはなかった。

 

伯父・伯母が亡くなってからずいぶん時が経った。あの絵皿の所在は今はわからない。