子どもはわけもわからないものに恐怖心を抱くものだ。
幼い頃、私を可愛がってくれた伯父・伯母の家の座敷には赤い牛が描かれた絵皿があった。焼き物だったのかガラスだったのか。とにかく濃い青を背景に赤い牛が描かれていた(写真はネットで拾ったもの)。
どういうわけか私はその絵皿が怖かった。私が遊びに行くと伯父・伯母は絵皿を裏返しにした。それでも絵皿の存在が怖かった。結局、伯父・伯母は絵皿を何処かへ片づけてしまった。
すると今度は絵皿が置いてあったサイドボード自体、また終いには座敷に入ること自体が怖くなった。「座敷には赤い牛がいる」というトラウマができ上ってしまったようである。
このトラウマから抜け出したのは小学校の高学年くらいの頃だ。考えてみれば普通に牛肉を食べるようになった頃かも知れない。
私が中学に上がった頃、伯父・伯母の家の赤い牛の絵皿は元の位置に戻されていたが、もう絵皿に恐怖心を抱くことはなかった。
伯父・伯母が亡くなってからずいぶん時が経った。あの絵皿の所在は今はわからない。