「登岳陽楼」 杜甫 -自作英訳初版- | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

一月はあっという間に去り2月になった。時の経つのは早い。今週(先週)は思ったほど寒くならず今日は気温も15℃まで上がり春のような天気だった。冬ももう少しである。

 

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冒頭に書いたように歳を重ねるほどに時の経つのは早く感じられるが、これを「ジャネーの法則」(“Janet's Law”)と言うらしい。年末年始のTV番組で知った。

 

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漢詩には先日書いた「黄鶴楼」のように高いところに登ったときに詠まれたものが多い。確かに高所から下界を見渡せば心象や情景も変わるだろう。

 

「黄鶴楼」(“Yellow Crane Tower”)「岳陽楼」(“Yueyang Tower”)「滕王閣」(“Pavilion of Prince Teng”)を加えて「江南の三大名楼」と呼ぶらしい。

 

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「登岳陽楼」    杜甫

 

昔聞洞庭水     昔聞く 洞庭(どうてい)の水

今上岳陽楼     今登る 岳陽楼(がくようろう)

呉楚東南坼     呉楚(ごそ) 東南に()

乾坤日夜浮     乾坤(けんこん) 日夜浮かぶ

親朋無一字     親朋(しんぽう) 一字(いちじ)無く

老病有孤舟     老病 孤舟(こしゅう)有り

戎馬関山北     戎馬(じゅうば) 関山の北

憑軒涕泗流     軒に()りて 涕泗(ていし)流る

 

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(現代語訳)

昔から洞庭湖のことはよく聞いていたが、今その洞庭湖を見渡す岳陽楼に登ってみた。

洞庭湖は呉と楚の国が東と南に裂けたところあり、その湖面は天地の事象を日夜映しているかに見える。

気がつけば手紙をくれる親族や友人も無くなり、年老いて病気がちの私に残されたのものはただ一隻の舟だけとなった。

関山の北では今も戦乱が続いていることを思うと、この楼の手摺りに凭(もた)れながら自然と涙がこぼれてくる。

 

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(自作英訳初版)

On the Yueyang Tower” by Du Fu

 

I’ve long heard Dongting Lake, now I’ve climbed the Yueyang Tower looking out over the lake,

Whereat Wu and Chu separate and face east and south, whereon various phenomena rise and fall night and day.

No correspondence from friends and acquaintances has only left me old age, illness and a solitary boat,

Hearing neighs of military horses in the north of the mountains, I've been reduced to a flood of tears beside the eaves.