自叙伝(その5)-オリオン座ベータ星リゲル | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

自宅2階の私の部屋は物干し場に繋がっていた。物干し場は東と南に面しており山手で町灯りが少なく星がよく見えた。青海島の星空以来、星を見ることが好きになっていた。

 

当時はラジオの深夜放送を聴くことが流行っており眠るのはいつも深夜だった。勉強に疲れたときと言いたいところだが、見たくなったら物干し場に出て星を見るようになった。

 

秋の夜空に明るい星はあまり無い。だが深夜になると冬の星座が昇ってきた。この冬の星座の神秘的な美しさに感動した。オリオン座、おおいぬ座、こいぬ座の「冬の大三角」などである。

 

学校でオリオン座の話をすると、そのベータ(β)星リゲルの明るさについてある同級生と議論になった。私はアルファ(α)星ベテルギウスが一等星で、リゲルは二等星だと主張したが、彼は両方とも一等星だと主張、放課後に図書館に調べに行った。

 

当時は校舎も図書館もすべて木造で、図書館は津苑会館に隣接していた。図書館は何故かいつも少し冷んやりとしていて古書の黴びた臭いがした。天文学の棚から星図を探しベテルギウス・リゲルともに一等星であることが確認できた。私の認識が間違っていたのである。

 

以来、彼とは星に限らず様々な話をするようになり、図書館へもちょくちょく行くようになった。今後リゲル(Rigel)の頭文字をとって彼をRと呼ぶことにする。

 

Rは元々野球部に入部したかったらしい。ポジションはピッチャーを希望したが、先輩たちは彼の球威を確認することもなく「バッティング・ピッチャーをやれ!」と指示したそうで、これが彼のプライドを傷つけた。Rは野球部への入部を断念した。

 

Rは卓球も部員並みに上手かったし、スポーツはほぼ何でもこなせたと思う。卒業時は弓道部に所属していたが、これは投じるものが単に球から矢に変わっただけのことであった。

 

我々のクラスにある意味リーダー的な生徒がいた。彼は1学期の学級委員であり、また最初の中間テストでトップクラスの成績を収めていた。以後、学校側、先生側に付いて何かと命令的な言動をするようになった。

 

因みに、このような生徒を英語ではteacher’s petと呼ぶ。以後、彼をペットの頭文字をとってPと呼ぶことにする。

 

RとPは同じ中学出身だったが、二人はあまり馬が合わなかったようである。実は私もPについて嫌な思い出がある。Pに勧められて「英協の添削」を始めたのだが「添削問題を日曜日に学校で一緒に解こう」とPは提案してきた。彼にはその方が緊張感あるらしいが私にとっては迷惑な話である。1度か2度付き合ったが嫌気がさしてやめた。また「英協の添削」も解約した。勉強方法までお前に指図される覚えはない、と感じた。

 

その後RとPの間でちょっとした(いさか)いもあって、Rと私は何かと鬱陶しいPに敵愾心に近い感情を持つようになった。だが今思えば、Pが居なければ我々の友情はここまで緊密になっていなかっただろうし、ある意味我々の高校生活にとってスパイスのような存在だった。

 

 

なお、この1年4組にはもう一人親友となる特筆すべき生徒がいるが、彼については次回以降のArticleで書くこととしたい。