「重陽」が過ぎ日差しもやや秋らしくなってきた。9月に入っても月日の流れが速い。
学生時代に教養部の国史学の講義で「七支刀(しちしとう)」というものを知った。石上神宮(いそのかみじんぐう・奈良県)に伝来した古代の鉄剣で4世紀頃、倭(わ)に対し百済(くだら)が朝貢した際に献上されたものという。
七支刀には当時の史実を示す文字が彫り込まれており、古代ロマンに思いを馳せるさすがは大学の講義だと感銘したものである。このような宝剣に関する伝説は日本だけでなく中国やヨーロッパにも多く存在するようである。
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「破邪の剣(はじゃのつるぎ)」という宝剣がある。近年ファミコンの「ドラゴンクエスト」にも使われたアイテムらしいが、私が知る限り旧制第一高等學校寮歌「嗚呼玉杯に花受けて」の最後の一節に出てくるものだ。
「破邪の剣を抜き持ちて舳(へさき)に立ちて我呼べば 魑魅魍魎(ちみもうりょう)も影ひそめ金波銀波の海静か」
「破邪」とは仏教用語で「誤った見解を打ち破ること」をいい、「破邪顕正」は「誤った見解を打ち破り、正しい見解を打ち出すこと」である。
「破邪顕正」というと、かの有名な日本映画「仁義なき戦い 完結篇」のオープニングにも出てきた。
「天政会綱領」
「我等は民主主義の理念を基調として愛国精神を高揚し、文化的民主国家の完成を期する。
我等は仁義を重んじ、伝統ある任侠道の作法を遵守す。
我等は破邪顕正に徹し、唯、天の審判進言なるを知って行動すると共に福祉国家建設の協力を期待する。」
なんとまあ崇高な理念が謳われていることか。
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「破邪の剣」と「魑魅魍魎」の英訳を調べてみた。「魑魅魍魎」は「山の怪物や川の怪物。様々の化け物。」のことである。
「破邪の剣」: “Sword of Malice”
「魑魅魍魎」: “Evil spirits of mountains and rivers”
仕事でもこんなアイテムがあるといいのだが・・・。