「照鏡見白髪」 張九齢 -今年の大学入試問題に寄せて- | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

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福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

公開されている今年の大学入試問題を眺めていて、以下の問題を見つけた。

 

(問題)2 (A

下の絵に描かれた状況を簡単に説明したうえで、それについてあなたが思ったことを述べよ。全体で6080語の英語で答えること。


 

(東京大学 2015年前期)

 

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「鏡」を見ていて以前ブログに書いた以下の詩を思い出した。だが、上の絵とは状況はかなり異なる。でもこのような問題は、不合格だった受験生にとっては忘れ得ないものとなろう。今の受験生は大変だ。

 

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「照鏡見白髪」      「鏡に照らして白髪を見る」   張九齢

 

宿昔青雲志        宿昔(しゅくせき)青雲の志(こころざし)

蹉跎白髪年        蹉跎(さだ)たり白髪の年

誰知明鏡裏        誰か知らん明鏡の裏(うち)

形影自相憐        形影自ら相憐れまんとは

 

(現代語訳)

若い頃は青雲の志を抱いて立身出世を夢見ていた。夢破れ躓きいつの間にか白髪の歳になってしまった。いったい誰が知っていただろう、自分と鏡の中の自分とがお互いに憐れみ合うことになろうとは。

 

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「蹉跎(さだ)」とは「躓(つまず)くこと。足をとられて倒れること。」の意味である。なお張九齢(678-740は盛唐の詩人・政治家である。


流離の翻訳者 果てしない旅路はどこまでも-pampas grass