「かぎろい(ひ)」【陽炎・火光】 “purple dawn” | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

昨日書いた「陽炎」「かぎろい(ひ)」とも読み、これは「かげろう」とは別のものを意味する。


かぎろい【陽炎・火光】

「日の出前に東の空にさし染める光」


この「かぎろい(ひ)」については万葉集に有名な歌が残されている。


「東(ひむかし)の野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ」(柿本人麻呂)


実はこの歌には少し曰くがあることを随分昔(たぶん昭和の頃)「人麻呂の暗号」という本で読んだことがある。


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普通の日本語訳は以下の通り。

「東の野に曙の光がさし、振り返ってみると月が沈みかけているのが見えた」


「月かたぶきぬ」は原文では「月西渡」となっており、この「東」「西」の対比が「人」「王朝」を表わすなど様々な解釈がなされている。


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この歌に関して以下の英訳を見つけた。


On the eastern plain, the purple dawn is glowing.

While looking back I see the moon declining to the west.

[Tr. Nippon Gakujutsu ShinkOkai, loc. cit.]

 

”Purple dawn is glowing”は実に美しい表現である。なお”Tr.”translation (or translated by)”の略であり、また”loc. cit.”はラテン語”loco citato”のことで「~より引用」の意味である。


でもこの歌には以前から少しだけ「気味が悪い」という印象を持っている。


流離の翻訳者 果てしない旅路はどこまでも-kagirohi