昨日書いた「陽炎」は「かぎろい(ひ)」とも読み、これは「かげろう」とは別のものを意味する。
かぎろい【陽炎・火光】
「日の出前に東の空にさし染める光」
この「かぎろい(ひ)」については万葉集に有名な歌が残されている。
「東(ひむかし)の野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ」(柿本人麻呂)
実はこの歌には少し曰くがあることを随分昔(たぶん昭和の頃)「人麻呂の暗号」という本で読んだことがある。
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普通の日本語訳は以下の通り。
「東の野に曙の光がさし、振り返ってみると月が沈みかけているのが見えた」
「月かたぶきぬ」は原文では「月西渡」となっており、この「東」と「西」の対比が「人」や「王朝」を表わすなど様々な解釈がなされている。
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この歌に関して以下の英訳を見つけた。
On the eastern plain, the purple dawn is glowing.
While looking back I see the moon declining to the west.
[Tr. Nippon Gakujutsu ShinkOkai, loc. cit.]
”Purple dawn is glowing”は実に美しい表現である。なお”Tr.”は”translation (or translated by)”の略であり、また”loc. cit.”はラテン語”loco citato”のことで「~より引用」の意味である。
でもこの歌には以前から少しだけ「気味が悪い」という印象を持っている。