「分詞構文-諸刃の剣」(“participial construction”)Part I | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

連休の1日目は半日出社したが、以後は猛烈な暑さの中もあちこち出かけている。今日は暑さもやや和らぐようである。


・・・・


翻訳の世界で「分詞構文は諸刃の剣」という言葉をしばしば耳にする。「諸刃の剣(つるぎ)」とは「一方では大層役に立つが、他方では大害を与える危険を伴うもののたとえ」(広辞苑)のことである。


Effective drugs tend to have side effects; they’re something of a double-edged sword.

「効き目の強い薬には副作用もあり、いわば諸刃の剣のようなものだ」


・・・・


分詞構文のメリットとしては、文章に歯切れの良さやリズム感を付加することであり、またデメリットの一つは文意に曖昧さが生じることである。


従って詩歌など文芸的な英文に使われることが多い。以前書いた俳句の英訳を考えてみよう。


「五月雨の降のこしてや光堂」

Have the summer rains, come and gone, sparing the Hall of Light?

(by Donald Keene)


この英文には倒置法と分詞構文が使われているが、これを取り外してみるとどんな文になるだろうか?私の独断で書きかえてみる。


The summer rains have come and gone, while I wonder they might have spared the Hall of Light.


この場合の”spare”「・・・なしですます」の意味と思われる。ただ俳句のリズム感は完全に失われた。分詞構文の ing”はスプリング(ばね)のようなものに私には見える。


・・・・


分詞構文のデメリットのもう一つは「懸垂分詞」(”dangling participle”の問題であるが、これについては次回の記事で書くことにする。