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一昨年の豪雨で被災し運休を余儀なくされた、JR東日本・津軽線の末端区間(蟹田-三厩)。

この区間は北海道と結ぶ大動脈として機能する青森-蟹田間とは異なり、純然たるローカル線で輸送量も非常に少ないため、かねてから存続が懸念されてきました。

この区間の存廃について、沿線自治体間で足並みが揃わなかったものですが、唯一廃線に反対していた今別町が鉄道復旧を断念したことで、廃止の方針が固まりました。

 

 

以下引用開始

2022年の大雨で被災し、運休が続く青森県のJR津軽線蟹田―三厩間(28・8キロ)を巡り、沿線自治体で唯一廃線に反対していた今別町の阿部義治町長は23日、鉄道復旧を断念する意向を表明した。JR東日本が提案しているバス転換の協議に応じる方針。沿線自治体の足並みがそろったことで、津軽線の廃止に向けた議論が加速する公算が大きくなった。
青森市内で同日、沿線自治体の首長による検討会議があり「今別町が鉄路にこだわり続けても議論が進展せず、沿線や町のためにならない。苦渋の決断だ」と述べた。
今別町はこれまで、冬季や災害時はバスなどの安全性に懸念があるとして、津軽線の廃止反対と鉄路復旧を主張。バス転換に応じる隣の外ケ浜町と意見が分かれ、存廃の議論が停滞していた。

以上引用終了

 

遂に廃止ですか…。

 

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三厩に列車で達することはできなくなる

 

もともとこの区間は、前述したとおり輸送量が非常に少なく、しかも近年は沿線にあった高校がなくなったこと、さらに沿線人口そのものも減少したことなどにより、さらに利用が減少していました。そこへ豪雨災害が追い打ちをかけたということです。

 

利用が少なく、鉄道としての特性が発揮できないか、存在意義が失われてしまったというのであれば、廃線となるのも已むを得ません。

ただし。

今年3月末の根室本線富良野-新得間の廃線など、「自然災害によるダメージを受けたことで、復旧せずに廃止」という事例が相次いでいることは引っ掛かります。40年以上前の鹿児島交通、先ほど挙げた根室本線や少し前の日高本線鵡川-様似、あるいはかつての高千穂鉄道(旧国鉄高千穂線)など多くの例がありますが、津軽線末端区間もそれに連なることになります。

そうなると、沿線住民や利用者としては、「自然災害に遭って運行不能になったことを『これ幸い』とばかりに廃線にするのでは」と、疑心暗鬼になってしまう懸念があります。

青森県知事もそのことは理解しているようで、以下のとおりのコメントを発表しております。

 

 

 

これによると、

青森県の宮下宗一郎知事は4日の記者会見で、2022年8月の大雨被害で不通となり、24年5月に一部廃線の方向性が決まったJR津軽線(蟹田―三厩)に関連して「災害をきっかけとした廃止の前例にはしたくない」と述べた。今後予想される他の赤字路線の存廃議論では住民や地域のニーズ、意向を優先したい考えを強調した。

とのことです(太字は記事の引用)。

 

青森県知事の発言はあまりにも当然の内容ですが、管理人はそれに付け加えて「鉄道があることによる地域への貢献度」も是非斟酌してほしいと思います。これを言い出すと必ずしも儲かっているかどうかは関係なくなるのですが、福島県が出資して復旧を後押ししたJR只見線や、これから熊本県が後押しすることが決まっているJR肥薩線の例もありますので、そのあたりは冷徹かつ慎重に考慮してほしいものです。鉄道は国防と福祉のツールなのですから。

 

ただ、ここで趣味的に興味が出てくるのが、JR東日本とJR北海道の在来線の運賃境界をどうするのかということ。

新幹線であれば新青森が境界になるので無問題なのですが、在来線は中小国駅。しかもこの中小国駅、今回廃止が決定した津軽線末端区間に含まれるのですよ。

そうなると

 

① 運賃境界駅を蟹田に変更する

② 運賃境界駅を蟹田ではなく新中小国(新中小国信号場)に変更する

③ 運賃境界駅として中小国駅を存続させる

 

のいずれかとなりますが、もし②となれば、JR東日本と鹿島臨海鉄道大洗鹿島線との境界を分かつ鹿島サッカースタジアム駅と同じ扱いになりますし(ただし鹿島サッカースタジアム駅はサッカー開催日には客扱いを行う)、③となれば、恐らく日本の鉄道の歴史上初の「客扱いせず、かつ駅としての実体がないにもかかわらず、運賃境界のためだけに名目上存続する駅」となります。これがバスだと、運賃境界のためだけに誰も乗り降りしないであろう場所に停留所を置く例もあるそうですが。

現在は新幹線開業もあり、本州と北海道を行き来する在来線の定期旅客列車はなくなっていますが、「四季島」や「カシオペア紀行」などの団体臨時列車は通過することがあるので、この運賃境界が問題となるわけでして。

こんなところに注目しているのは流石に少数派でしょうけど(^_^;)

 

◇関連記事(管理人が津軽線末端区間に乗車したときの体験記)

 

 

このとき悔やまれるのが、竜飛崎や「階段国道」に行かなかったことです。まさか廃線が決定するとは。行っておけばよかった。

 

【おことわり】

当記事は06/05付の投稿とします。また、当記事で使用している写真は、全て以前の記事からの転載です。