このまえの№199. でN700系の話題を取り上げましたので、今日は500系に関するネタを持って参りました。最近新幹線ネタが続いておりますが、今しばらくお付き合いくださいませm(__)m

そういえば、今年は500系が就役して10年の節目に当たるのですね。


500系の開発のコンセプトは、一言で言って以下のようなことです。


「東京からの乗客をいかに西に引っ張れるか」

「山陽区間内の乗客をいかに東に引っ張れるか」


このようなコンセプトのもと、500系は登場しました。

この車両の母体になったのは、500系900番代「WIN350」ですが、この車両は車体断面を極限まで小さくし、かつ先頭形状も空力特性を考えたもの2種類が揃えられました。この車両を使用した試験結果をもとに、量産型として世に出たのが500系です。


500系は、山陽区間の最高速度をできる限り高くとることを目標に設計されました。そのため、それまでの100系や300系が編成中に付随車を組み込んでいたのに対し、500系は始祖0系以来のオールM編成とし、しかも編成全体の出力は18240kwと、0系を遥かに凌ぐ高出力ぶりです。しかも、0系よりずっと車体は軽量化されていますから、単位重量あたりの出力という点で見ると、それこそ大人と子供くらいの差があります。他方、18240kwの出力を誇るということは、電動機をブレーキ・発電機として使用した場合でも大きなエネルギーが得られることを意味しますから、500系は省エネ車両でもあるのです。


500系を語るとき、なんといっても外せないのはその風貌です。

先頭形状は、100系がボンネット式、300系が日本刀の切っ先のような形であるのに対し、500系のそれは鋭い嘴(くちばし)のように尖っており、しかもその先端に向けた絞込みが15mに及ぶため、非常に鼻先が長い戦闘機のようなスタイルになりました(写真↓)。


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これは非常に未来的な風貌で、現在でもこの先頭部で記念写真を撮影する家族連れやビジネスマンが引きも切りません。

車体は肩部を削ぎ落とし、裾を絞って丸みを強くした断面で、300系に比べ10%以上断面積が小さくなっています。これは、高速運転に当たっては車体断面を小さくしたほうが有利だからですが、これによって車内の雰囲気は、もはや鉄道車両というよりは航空機のそれに近くなりました。(写真↓)


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普通車の内装はこんな感じ。


ではグリーン車は?


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こんな写真で恐縮ですが、落ち着いた雰囲気であるということはお分かりいただけると思います。

航空機でもナローボディのジェット機(マクドネルダグラスMD-87など)はエコノミー席が横5ないし6列ですから、まさにジェット機に乗っているような感じです。余談ですが、東海道新幹線の開業当初、0系を評して「翼のないジェット機」と形容されましたが、その評は500系にこそ当てはまるような気がします。


塗装もそれまでの白とブルーのツートンカラーから、グレーの濃淡にブルーという実に斬新なものになりました。このグレー濃淡の塗装は、アクセントカラーを変えつつJR西日本の新幹線車両に共通ですが(0・100系は蛍光グリーン、ひかりレールスターはオレンジ)、この塗装は500系以外には見られないため、この塗装も500系の個性を際立たせています。


ただ、東海道区間に乗り入れる以上は「定員確保」が至上命題だったようで、他の系列では1両に2箇所ある洗面所が1箇所になっていたり、100・300系普通車の座席間隔より20mm狭くなっていたり、その努力は涙ぐましいものがあったようです。また、この車両の登場当時、JR西日本はこの車両を使用する列車に別の愛称をつけることを考えていたようですが、JR東海の反対に遭い頓挫しました。しかし、このことで、この車両を使用する「のぞみ」が「500系のぞみ」といわれるようになり、かえってこの車両が有名になったように思います。


営業運転開始は平成9(1997)年3月で、新大阪-博多間を2時間17分という驚異的なスピードで結びました。このときは山陽区間のみ・しかも1編成だけという綱渡りのような体制でしたが、JR西日本技術陣の献身的なフォローにより、1件の初期故障を出さずに、同年11月のダイヤ改正を迎えます。

この年の11月29日のダイヤ改正から、500系はいよいよ東京へ乗り入れを開始し、東京-博多間4時間49分と初めて5時間の壁を破る俊足ぶりを発揮しました。このときはまだ3往復のみでしたが、後に全9編成がそろい、東京-博多間の「のぞみ」は、2時間に1本が500系化され、その途方もないポテンシャルを発揮し始めました。


しかし、東海道区間では270km/h運転しかできず、500系はこの区間では完全なオーバースペック(過剰性能)になります。その後、平成11(1999)年からJR東海が700系を投入し始めたのは、この500系の性能を適正化しようという狙いがあったようです。

また、JR東海では300系・700系の大量投入によって、16両編成1323名という編成内容がデフォルトになりましたが、これとは異なる500系は例外的な存在であり、車両運用上も旅客案内上も使いにくい車両になってきました。さらに、肩部を削ったことで荷棚の奥行きが浅くなり、300系や700系では載せられるキャリーバッグやトランクが、500系には載せることが難しくなってしまいました(管理人の実体験)。窓側に席を占めたビジネスマンからは、圧迫感を感じるという指摘も寄せられるようになります。


以上の理由により、東京-博多間の直通「のぞみ」は、今後N700系に置き換えられることが決定し、500系は山陽区間に封じ込められてしまうようです。山陽区間封じ込めに伴い、グリーン車も外されるという噂があります。

来たるものがあれば、去るものがある。世のならいですが、さびしいものがありますね。


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というわけで、東海道区間から撤退が決定し、しかもその中で去就が注目されるグリーン車の乗車ができる、当ブログ主催の「名古屋吊り掛け夏の陣」。まだまだ御参加をお待ちしております!