既に経済やネットでは一般的になったこのキーワードですが,原点ということでChris Andersonのものを読もうと入手.
内容はLong Tailに気づいた経緯から始まり,何が起こっているのかについて経済と文化的な点から説明が続き,最後に今後について述べられている.
順番が逆だが以前読んだ「ビジネス法則の落とし穴」 で反論されていたことについては既に述べられていて,この本の著者は本当に初期のWiredの記事だけを見て書いていたのかとちょっとあの本の内容には更なる疑問が…
基本的には「niche文化の顕在化」とそれに伴う「新たな経済活動の現われ」といったところ.
気になるのはTailでの経済効果について2枚舌のように書かれていること.
結論からするとTailそのものの経済的な効果はかなり微妙.
在庫と配送の両方のコストをほぼゼロにしてはじめて商売として成り立つ感じで,この点からするとデジタル化可能なものだけという感じ.
また,Amazon.comのmarket placeについて書かれているが,確かにAmazonはいいかもしれないが,参加している小売店のメリットは販路が増えることによる多少の販売機会獲得がある程度(もちろん通常の販路を増やすよりも効率はいいが)でさほど多くないし,同じような場を提供するサイトが増えるとその全てに登録したり,その販売管理をしたりと必要な管理費の向上が考えられ,思わずトヨタのJITを思い出した.
つまり,下請けにしわ寄せが行くだけという感じ.
どちらかというと文化的な革新という点ではインパクトがある感じ.
今までの一部の生産者と大部分の消費者から消費者と生産者が一体化したものになるというもの.
これはある種貨幣経済の破綻に近いものを引き起こす可能性があると感じた.
というのもネットを通じてbarterが可能になるため,極端な場合だけど,貨幣や商業界を経由しない経済もありえるため.
つまり,等価交換のための価格があるが,実際には個々人が自分の作ったもの同士を交換すればよくなるし,その場が提供されたと考えられる.
これは究極の中抜きであり,究極のtracabilityでもある.
ただ,気になるのはentertainmentなどの作品でnicheが活況になるのは分かるが,そのしわ寄せで大作や長編のものが作れなくなる可能性はないのかというところ.
in placementでウザイCMを本編に入れるとかすればsponsorが付きそうだけど,時代物とかって無理っぽい感じがするけど…
まあ,どんなメディアも出てきた当初は色々試行錯誤したり,色々な極論や批評が出るものだけど,既存のものがなくなるほどがらりと変わるにはそれなりに時間がかかるだろうけどね.
もう一つ,日本ではどうなのかなというところ.
日本は世代と性別での分化は感じられるけど,基本的に大衆化,人と同じが好きだからね.
基本は大衆的でちょっとオリジナルって言う変な性癖がある.
そこから外れるとマニアとかおたくとかに分類されちゃう.
そういう意味では多くのnicheというのは成り立つのか疑問.
アメリカのような他民族国家ならではという可能性も.
結局,Long Tailって商売として狙うべきかは業種によるって感じだね.
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