ハイデルベルク信仰問答(新教出版社版)第六主日の問16が証拠聖句としているローマ5:12、5:15にある「ひとりの人」を見ていきます。
そういうわけで、ちょうどひとりの人によって罪が世界に入り、罪によって死が入り、こうして死が全人類に広がったのと同様に、――それというのも全人類が罪を犯したからです。
ローマ5:12
ただし、恵みには違反の場合とは違う点があります。もしひとりの違反によって多くの人が死んだとすれば、それにもまして、神の恵みとひとりの人イエス・キリストの恵みによる賜物とは、多くの人々に満ちあふれるのです。
ローマ5:15
5:12の「ひとりの人」は言うまでもなくアダムのこと。5:15の「ひとりの人」は後に続くように主イエスのこと。この「ひとりの人」は、私が今日の礼拝の前に神様から解き明かしを受けたところによれば、「私たち一人ひとりの原型」だと言う意味があります。
その原型が、どのようにして私たちの信仰に関係していくのかを解説します。
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家の教会など教団・会派の指導がない教会における礼拝メッセージやバイブルスタディでは、取り上げる聖書箇所の選び方が、行き当たりばったりになりがちです。聖書には実に多くの事柄が記されており、道しるべなしに読み進めていると、極めて重要な概念を理解しないまま、キリスト信徒として年月だけが積み重ねられることになりかねません。
そういう中で「規範となるテキスト」として、ルターの宗教改革から約50年後に編纂された「ハイデルベルク信仰問答」を用いることには、大きな意味があると考えています。プロテスタンティズムが確立してまもない頃の、新鮮な聖書理解が反映されたテキストであり、大きな驚きを覚えながら読み進めることができます。
その後の450年間に無数の会派に分裂していくプロテスタント教会の大元にある、太い源流のようなプロテスタント信仰が、一種のタイムカプセルのように保存されたテキストであることにも大きな意味があります。現代の多くのプロテスタント教会では教えられなくなった、極めて重要なキリスト者のあり方が取り上げられています。
ハイデルベルク信仰問答は、宗教改革後にドイツの各教会が聖書を手がかりとして信仰の規範を確立しようとしていた時代、「決定版となるテキスト」を確立すべく、当時のプファルツ選帝侯フリードリヒ3世が有力な聖書学者や聖職者を集めて編纂しました。キリスト教信徒として知っておかなければならない、最も重要な概念をカバーできるように、129の質問と回答によって構成されています。また、第1主日から第52主日までの区切りでまとめられており、1年間分の構成となっています。