6月特選映画コロナ編【15】★映画のMIKATA「ファヒム」★ | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。

 

先月5月30日は私の誕生日でした。Facebookでいつも映画ブログを読んでいる方からたくさんのお祝いのお言葉を頂きまして、ありがとうございます。ここにお礼の言葉を申し上げます。

 

一本の映画がその人の人生を変えることもあります。どんな映画を見るかは、どんな人生を選択するかーでもあります。

 

コロナ禍で外に出るのが怖くて最近じっと家に閉じこもっています。新作公開した『HOKUSAI』 (2020年、 橋本一監督、河原連脚本 )、『いのちの停車場』 (2021年、 成島出監督、南杏子原作) や『ノマドランド』(2021年、クロエ・ジャオ 監督、ジェシカ・ブルーダー原作『ノマド 漂流する高齢労働者たち』)をもう既に映画館で観賞したので、絶対に観賞したい作品はもうなくなりました。ので、いつものように1週間(時に新作は2泊3日)1000円で5本の作品が借りられるレンタルショップ「ゲオ」でDVD を借りました。その中の1本を今回も特選映画として選択することにしました。借りた映画は、私が観たいと思っていたが、公開中に見逃した最近の名作ばかりです。特に今回の観賞DVDは、私のライフワークの一つである«ナチズムとホロコースト»のテーマに関わる作品が丁度レンタルショップの棚に並んでいたので借りました・・・。

 

一本目はー、

➀元ナチス兵のサッカー選手バート・トラウトマンの実話を基に描いた『キーパー/ある兵士の奇跡』(マルクス・H・ローゼンミュラー 監督)です。イギリスの捕虜となったトラウトマンは、たばこをかけて収容所内のサッカーに加わる。彼のゴールキーパーとしての才能を地元の゜村のサッカーチームの監督が見てスカウトする。その後、イギリスの名門サッカークラブ「マンチェスター・シティFC」にゴールキーパーとして引き抜かれ入団する。でも、ドイツの敵対国であったイギスの観衆の風当たりは冷酷であった・・・、元ナチス兵という彼の経歴に誹謗と怒号が競技場に響いた。彼への反感にユダヤ人協会の長が、彼個人に罪はない、彼を一方的に非難することは私たちが加害者になることだ・・・と新聞に投稿する。恐らくサッカー好きのファンならば心躍るくらい面白い作品ですーネ。彼の良心を苛んでいたことは、兵士であった時に、彼の上官がサッカーで遊ぶ少年無残に射殺した時に、そばで見てい乍らそれを止められなかったことでした。この良心の疼きは、戦争犯罪の未だに残る問題です。

 

 

二本目はー、

②難民としてバングラデシュからパリへと政治亡命した天才チェス少年が主人公の『ファヒム』(ピエール=フランソワ・マンタン=ラバル監督)です。フランスの政治制度はよく分からないが、意外に難民に寛容のようです。ところが、政治難民として難民定住の手続きを取ろうとしても条件を満たさなくて、父親はバングラデッシュへ強制送還を命じられ、ファヒム(アサド・アーメッド)は里親に預けられる決定が下された。チェスのフランス全国大会でチャンピオンとなったファヒムの境遇に同情して、ナントか難民申請を許可させようと、フランスの大統領に電話で嘆願する・・・。フランスには直接大統領と電話で話せる窓口があるのですね、感心しました。ファシムのチェスの腕前と強制送還の事情を話したところが、大統領が難民許可を与えた・・・のでした。

 

難民の映画が見たいと思っていろいろ検索しましたら、検索エンジンに

ファヒム』という映画が抽出されました・・・。従来のかわいそうな難民の悲劇を描いたストーリと言うよりも、バングラデシュからパリへと政治亡命した天才チェス少年の夢の様なサクセスストーリでした。日本とは全然違った難民への待遇、つまり、強制収容所に閉じ込めて劣悪な環境に置く日本の政治難民の待遇とは違った対応ー、フランス政府の待遇には驚きました。日本政府は未だ外国との鎖国政策を続けている孤島なのかも知れません・・・ネ。

 

 

 

三本目はー、

③無断外泊することが多くなっていた高校生の息子・石川規士が同級生の殺害に関与している疑いが掛かっているが、家族は事件が解明されずに未だ行方不明になっているサスペンスドラマの『望み』(堤幸彦監督、雫井脩介原作、奥寺佐渡子脚本)です。彼の殺人容疑のために一級建築士の父親・石川一登の会社も傾き始める。息子一人の嫌疑のために、家族が崩壊の音を立てている。山田洋次の描く日本的ペーソスと・・・、邦画独特の家族の危機です。最後に息子は仲間に殺されて遺体で発見される。日本人は家族の悲劇のストーリが大好きです。日本人の人情好きに心閏わせる映画でした。原作がしっかりしているので、ストーリ展開にほつれがないなー、脚本がいいなーと感じました。

 

四本目はー、

④アルジェリアは内戦後、イスラム原理主義の台頭により首都アルジェでは女性にイスラム圏独特の«ヒジャブ»の着用を強要する風潮に変わった。ファッションデザイナーを志す女子寮生活するネジャマは、女性らしいファショナブルなドレスを着るファッションショーの開催を企画する。が、宗教が女性の服装にまで干渉するようになった。イスラム原理主義の女性たちにドレスを引き裂かれて邪魔された。ネジャは女子寮の中でファッションショーを外部に知られないように秘密にさせてくれと、寮母に頼む。ショーの最中に事件は起きた、銃を持ったイスラム集団が女子寮を襲撃し、着飾った女性たちが無差別に殺された・・・。社会にも自由を求め、束縛を逃れる女性たちの叫び声が、この映画から感じられました。本国アルジェリアでは上映禁止となった『パピッチャ/未来へのランウェイ』( ムニア・メドゥール監督 )のような作品や映画監督がたくさん登場するといいです‐ネ・・・と、私は切に思いす。人間の自由を束縛する政治の鎖は、何時か自由を求める国民によって引きちぎられます・・・ヨ。習近平独裁巣政権によって見せかけの繁栄を喜んでいる中国の若い世代も、その内にいつか人間の自由と権利を求める日が来るでしょう・・・。それまで、香港の人々よー頑張ってください・・・!!!

 

 

五本目はー、

⑤1933年2月。ベルリンで両親や兄と暮らす9歳のアンナは、スイスへ亡命すると父親から告げられる。ユダヤ人演劇批評家の父は、ヒトラー政権の台頭に身の危険を感じていた。持ち物は1つと言われたアンナは、過酷な逃亡生活の際に大好きなピンクのうさぎのぬいぐるみと惜別しなければならなかった。『ヒトラーに取られたうさぎ』(2020年、カロリーヌ・リンク監督)は、ドイツからスイス、スイスからフランス、フランスからイギリスへと転々と亡命生活を強いられた一家の物語です。従来のホロコーストの作品は、ユダヤ人弾圧の凄惨な内容でしたが、新しいホロコーストの映画は、やや視点が変わってきました。

 

さてこの五本の中から特選映画1本を選ぶとすれば・・、私は迷った末に『ファヒム』を選びます。『キーパー/ある兵士の奇跡』も良かったーナ、『ヒトラーに取られたうさぎ』も素晴らしかったです、3本とも甲乙つけがたい秀作でした。でも、私は映画の最後の最後に胸がハッピーな気分でジーンとくる作品が好きなんです。心に響く胸の熱さを比較すると、やはり『ファヒム』の方-カナ・・・。