◆映画情報
上映時間 127分/劇場公開(東宝)/2013年1月26日公開/
オフィシャル・サイト
http://strawberrynight-movie.jp/
◆スタッフ
監督: 佐藤祐市/製作: 亀山千広。細野義朗。市川南。山田良明。高橋基陽/プロデューサー: 成河広明。土屋健。高丸雅隆。江森浩子/エグゼクティブプロデューサー: 種田義彦/原作: 誉田哲也『インビジブルレイン』(光文社刊/脚本: 龍居由佳里。林誠人/撮影: 川村明弘/編集: 田口拓也/音楽: 林ゆうき/美術デザイン: 塩入隆史/
スクリプター: 藤島理恵/映像: 高梨剣/照明: 阿部慶治/選曲: 藤村義孝/美術進行: 藤野栄治/録音: 金杉貴史/助監督: 本間利幸/
◆キャスト
竹内結子: 姫川玲子/西島秀俊: 菊田和男/大沢たかお: 牧田勲/小出恵介: 葉山則之/宇梶剛士: 石倉保/丸山隆平: 湯田康平/津川雅彦: 國奥定之介/渡辺いっけい: 橋爪俊介/遠藤憲一: 日下守/高嶋政宏: 今泉春男/生瀬勝久: 井岡博満/武田鉄矢: 勝俣健作/染谷将太: 柳井健斗/金子ノブア:キ 小林充/今井雅之: 宮崎真一郎/柴俊夫: 片山正文/金子賢 川上義則/鶴見辰吾 藤元英也/石橋蓮司 龍崎神矢/田中哲司 長岡征治/三浦友和 和田徹/
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1月下旬の特選映画をアップロードします。映画観で観賞した映画は3本でした。
1本目は、誉田哲也の:刑事もの犯罪小説『インビジブルレイン』(光文社刊)を原作とした、テレビドラマ「ストロベリーナイ」の映画版(佐藤祐市 監督)です。私は、特選映画に選びました。主人公の警視庁捜査一課の女刑事・姫川玲子役にTV版と同じく竹内結子が演じます。私は映画上映前に放映された番宣目的のテレビドラマ版「ストロベリーナイ」も悉く見ました。
さらに、私は映画を見る前に初めにこの小説を耽読しました。2013年のこの映画ブログの方針のひとつなんですが、映画をヨリ「深く」了解するために原作を、可能な限り見た後か見る前に読むことにしていますー。
小説の冒頭から「柳井健斗」の、小説の中で曖昧模糊とした得体の知れない登場人物の微妙な動揺が、一人称の呟きや思惑として語られるー。今までの刑事ものの小説とはやや意表をつく独白形式が続くなーという驚きがありました。
さらに、刑事もののアクション小説にもかかわらず、女刑事「姫川玲子」が主人公であり、「姫川班」を支える犯罪捜査の敏腕ツワモノ武者たち男刑事が脇を固めている。小説にしても映画にしてもTVドラマにしても、これまでの「刑事もの」の主役は男でした。これも意表を付く異例の場面設定ですーね。
さらに、主人公「姫川玲子」が、本庁エリートの美人警察官僚で、謎の犯罪事件を怜悧な推理で見事に机上で解きほぐし、シャーロックホームズのように解決する知能型の犯罪捜査のプロではなくて、警視庁捜査一課に属し、現場で犯罪者を追跡する独身女刑事であるのがまた、異例の舞台設定でしたーね。
しかも、一貫して清廉潔白で法と正義のために刑事の使命を貫くというよりも、自分自身が過去に犯罪に巻き込まれた犯罪被害者としての暗いトラウマを抱え、その体験ゆえに理不尽な「犯罪者」に対して、根深い復讐と憎悪の深い『闇』を抱えてるーという、これもまた異例な性格設定でしたーね。
著者の誉田哲也は、なにもかも異例の『姫川玲子』をあの家政婦「ミタ」で異色のキャラクターが人気と高視聴率を生んだドラマの主役・松島奈々子をイメージして書いたようですが、映画ではTV版どおり主役を竹内結子が演じていました。私は、TV版で見慣れているせいか、映画版でもピッタリだなと感じました。女は離婚を経験すると強くなるといわれますが「え…、竹内結子って、耐え忍ぶ優しい女と、男の暴力に立ち向う強い女と、それでも女の性を漂わせるオーラを演じられる女優だったのか…な」と驚嘆する好演でした。いくら歌舞伎役者に、酒と女遊びは芸の肥やしーと通念のように言われますが、これも竹内結子の恋を裏切った中村獅童のお陰なのでしょうかーね。
体に「もんもん」を彫ったヤクザの親分・ 牧田勲(大沢たかお)と車中で、お互いの心の「闇」を確かめあうように熱く抱擁しあうシーンは、私もスクリーンを見ていて熱く興奮しました。TV版にはない映画ならではのシーンでした。小説を読んでいて、監督はこの濡れ場シーンをどのように映像化するのかなーとやや期待しましたが、まずまずの仕上がりでした。その車を停車した雨の降る空き地の近くで、姫川に恋慕する同僚デカの菊田(西島秀俊)が心配そうに様子を見守っている姿もいい演出だな…と思いました。
2本目は「つやのよる」(行定勲監督)でした。「切羽へ」で第139回直木賞受賞した作家井上荒野の小説を映画化したもので、テレビの番宣でかなりエロチックなシーンが放映されていたので、期待してみたのですが、やや興ざめで落胆した映画でした。
:原作を読んでいないので、作品細部の構成と、映像からはどうも、多情多感な「艶」の不貞に心を弄ばれながらも、最愛の女性「艶」に執着する春二(阿部寛)が、エロスに溺れ、惑溺する情感が伝わらなかったですーね。「艶」が病室で昏睡状態に陥りながらも、最愛の妻を愛した自分以外の男たちに妻の危篤を知らせる春二の歪んだ「愛」もどうもよく分からなかったです…ね。これは、原作者の問題なのかもしれません。
女は男の愛を自分ひとりの「愛」として独占したいものです。男は、女の愛が自分ひとりに向けられているものと錯覚しがちー、或は錯覚したいものですー。ただ、女の「愛」が気まぐれで放恣な場合、女に対する男の愛の「錯覚」だけが、自己肥大するものですーね。恐らくそんな男と女の「愛」の落差から生れる悲劇のドラマなのでしょうーね。
パンティーをちらちらさせるながらミニスカートで踊り、少年たちを悩殺するAKBの少女たちの青い性というよりも、爛熟した中高年の倒錯した『性愛』を得意とする作家・井上荒野の世界は、私にはよく分かりせ…ん。
3本目は、中山七里のミステリー小説を橋本愛主演で、利重剛監督が映画化した「さよならドビュッシー」(宝島社刊行)でした。主演の香月遥役の橋本愛、片桐ルシア役の相楽樹、ビアノ教師の岬洋介役の清塚信也ー、申し訳ないが騒がれるアイドルでも人気役者などが出演しない映画なので、逆に映画が先入観なしに新鮮に鑑賞できました。映画を見た後に、ラストシーンにビアノの演奏会場での香月遥の「月光」(ピアノ演奏は小野川道幸)のビアノ曲が感動の余韻を残しました。クラッシックの好きな映画ファンには、たまらない作品だと思います。
最後の最後に暴露される香月遥と片桐ルシアのすり替えの「謎」は、推理小節とサスペンスを堪能できる素晴らしいストーリでした。私は、特選映画にあれかこれかと迷いました。