★映画のMIKATA【14】再掲「鬼平犯科帳-本門寺暮雪」★映画をMITAKA・・・ | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。




流石埜魚水の阿呆船、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・



GWの昨日、近隣で散歩するところはないかなーと、久しぶりに「池上本門寺」を訪問しました。Facebookに感想を掲載しようかと思ったのですが、映画論でこの由緒あるお寺の歴史的なお墓について、或は、それにまつわる歴史と文化について書いたな、と思い出しました…。そこで、古い記事を新しく再掲載しました。そんな由緒あるお寺ならば訪ねてみよう、そして誰かのお墓にお参りしようと思いました。未だにここに来ると感慨深いものがあります。古い記事もまんざら抹香臭くもないな…。


鬼平で知られる火付盗賊改の長官、長谷川平蔵が江戸市中に暗躍する盗賊を捕縛するために駆け回る≪鬼平犯科帳≫という時代劇があります。原作者の池波正太郎の短編時代小説に、「本門寺暮雪」があり、その中に池上本門寺の石段≪此経難持坂≫(しきょうなんじざか)が登場します。

長谷川平蔵は、江戸時代の天明から寛政に活躍した実在の人間であるようで、直参旗本から選ばれ、町奉行の手に負えない凶悪な盗賊を取り締まり、切り捨てることも許されていたという。イギリスのスパイ映画でいうと「007」の暗殺の称号を持っていたようなものです。しかし、池波正太郎によって、平蔵は情に厚いが悪は許さない…、気骨はあるが粋な侍に描かれています。

長谷川平蔵が、まだ旗本の放蕩息子としてくすぶっていた頃、道場の悪友であった井関録之助と偶然に出会う。そのとき、平蔵を付狙う殺気のみなぎる、剣筋の鋭い怪しい侍が待ち構えていました。命を狙われている平蔵と録之助は、剣さばきの凄い奴の後を追跡する。

雪の降る池上本門寺の夕暮れ時、二人は寺の石段、<此経難持坂>96段を登り始めた。平蔵を仕留めようと虎視眈々と狙うその男は、石段の上で平蔵と井関録之助を待ちうけていた。あと五~六段というところで突如、殺気に満ちた、切っ先の鋭い剣に襲われた。すさまじい殺意であった。録之助は初めの一撃で石段を転がり落ち、平蔵は刀を抜く間もなく、暗殺者の刀をかわし、体当たりを食わるが…。平蔵の命も風前の灯火という、あわやの一瞬、先ほどの茶店で腰を下ろして、そこにいた柴犬にえさを与えていた、その犬が平蔵を襲う剣客に吼え、足に噛み付き、その隙に平蔵は、その男を石段から追い落とし、切り捨てた。

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春うららの午後に、池上本門寺にお花見にいきました。桜並木も満開。ちょうど4月5日の今日は、お釈迦様の誕生日を祝う「花祭り」。五重塔の御開帳も重なって、寺内は、江戸火消しの纏のパレードが練り歩き、賑わっていました。

緑の命が芽を覚まし、大地がぬるむ春だな…。

夜桜もまた怪しい春のそよぎを肌に感じられそうだな…。

雪が階段を白く染める季節に、凍る足を一段ずつ昇ってみたいな…。また来るときには、古い絵地図を広げて、草鞋をはいてトボトボウロウロ、旅人のように周辺を歩くのも楽しそうだな…。

 

いつもは参拝する人が、階段をのぼる姿がまばらに居るだけで、閑散としている<此経難持坂>も、階段から大門まで、ぎっしりとお祭りの露天商が、お好み焼きや焼きそばやたこ焼きの香ばしく芳しい匂いを放ってお店を広げていた。

階段の上には信者から献灯された、ドッシリ大きな石灯籠が左右に建っています。こんな石造の陰に隠れひそんで、平蔵を狙っていたのかな…と、この階段に来る度に鬼平シリーズの時代劇を思い出してしまう。


池波正太郎は、品川区の戸越に住んでいたことがあると言う。食道楽で散歩好きなの彼のこと、この近辺の食い物やの軒を覗き、美味しいお蕎麦をすすり、この<此経難持坂>の急な階段をフウフウ息を切らせて昇り、本門寺の砂利をサクサク踏んで散策し、朱塗りの文化財、五重塔の尖塔を見あげ、幸田露伴の墓石に参拝したこともある筈です。


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