「ロングだと、なぁに?」
何だろうな、オトコなのにアイバくんのこの可愛い感じは。
身長だって俺より少し高いはずなのに、アイバくんが俺を見る目線はいつでもちょっと下からで。
「フフフ。そこのクローゼット、開けてみ?」
「えっなになに?ココっ?」
仲居さんが布団を出してくれた襖の隣の板張りの開戸を顎と視線で示すと、アイバくんが立ち上がって開けに行く。
ボン、
鈍い音を立てて扉が観音開きに開く。
「あっ!えっ?!」
アイバくんが両手で開戸を開けたまま、左の肩越しにこちらを振り返る。
「何コレ、浴衣?!」
「ふふ、それ着てさ、後で行こ?屋上露天風呂。」
「ま~じで~!すげぇ!」
早速浴衣を手に取って広げ、胸に合わせて扉の内側についている鏡に映して笑ってる。
良かった、喜んでくれて。
実は『えっ?風呂?ショウくんと?』なんて言われたらどうしようかと思った。
「アレ?おれショウくんに温泉好きって話したっけ?」
「ん?いや・・・知らないけど?」
「おれね、温泉すっげぇ好きなの!銭湯とかめっちゃ行くし。あっ・・・でもどうしよう、おれパンツの着替えないや。」
「抜かりはなぁい!」
そう来ると思ってドヤりながら腰を浮かしてボストンバッグを引っ張る。
ここの予約が取れて、クローゼットに眠っていた下着を2パック用意して来ていた。
「コレ。アイバくん、どっちがいい?」
「くふふふっ!すげぇ!用意シュートー!」
「なんか眠気冷めちゃった、どうする?行く?今から、温泉。」
「どうする?行っちゃう??行っちゃいますか!」
→Step#59