「どこ行く?何食べる?」
ニコニコしながら弾むように隣を歩くアイバくんは尻尾が生えてたら千切れる程振ってんじゃねェのってくらい嬉しそうに見えて、こっちもつられて口角が上がる。
「あのさ・・・アイバくんが良ければ、俺行こうと思ってた定食屋があンだけど・・・」
「いいねー、定食!何系??行こう、そこ!」
アイバくんは、場所も知らないくせに俺の、手・・・を引いて・・・振り向いた顔に、ドキン・・・って、何だよ、ドキン、って。
「ぅおぉーー!マジか!!」
目指した定食屋の入り口に『臨時休業』の札を見つけて思わず声を上げる。
「ゴメン!!アイバくん!歩かせちゃったのに休みってアリかよーー!」
「まぁまぁ、そういう時もあるよ、くふふっ、いいよ、だいじょーぶ!ホラ、臨時って書いてあるし。きっと急なお休みだったんだよ。」
しゃがみこんで頭を抱える俺の肩に手を添えてアイバくんもしゃがみこむ。
「やー、ほんとマジごめん!」
「くふふっ、だからサクライさんのせいじゃないって!でもどうしようね、ホカ探す?」
「うーん、でもなぁー!言っていい?俺、実は朝からここの唐揚げ定食 食おうと思ってたから腹が唐揚げ待ちだったんだよなー!」
立ち上がりながらそう言うと、アイバくんが素っ頓狂な声を上げた。
「えっ、唐揚げ?」
「あ、言ってなかったっけ?ここさ、老舗の唐揚げ定食屋なの。」
「ふぅん・・・」
アイバくんが何か考える素振りを見せたあと、何か思いついたように両肩を掴まれた。
「ね!サクライさんの家ってここから近い?!良かったらさ、おれ作ろうか!おれんちの唐揚げもけっこう美味いよ?」
「あ・・・」
えっ? アイバくんが作るの??
(俺自炊なんてまるっきりだけど)
あ、そか、実家の中華料理屋手伝ってるんだっけ。
ってかウチ来ンの?
(ヤベー、片付いてねェし)
なんて考えて返事をするのを忘れてたら、肩に置かれた手が離れてアイバくんの瞳(め)から光が消えた。
「あ・・・、ゴメン、おれ・・・出しゃばっちゃったね。サクライさん有名人だもんね、そんな簡単に他人を家になんて上げないよね・・・ゴメン、忘れて?」
そんな・・・悲しそうな・・・泣きそうな表情(カオ)すンなよ・・・
なにコレ?
「いやっ、是非!」
とにかく、アイバくんに笑顔になって欲しい、その一心で、今度は俺の両手がアイバくんの肩を掴んで伏せられた瞳を覗き込んでいた。