久し振りの休みで天気も良くて、朝のワイドショーの占いが買い物に出るといいって言うから、普段は占いなんて信じていないけれどたまには流されてみるのもいいかもしれないと気に入りのジャケットを羽織って外に出る。
思ったより道も空いていて、CDショップでも予定時間より早く探していた洋楽が見つかった。
「もう一軒くらいなら行けそうだな。」
腕時計を確認すると、何度か入ったことのあるショップへ久し振りに行ってみる。
ベーシックなシャツを探してるが気に入るデザインが見つからず、階上(うえ)から降りてきた店長に話しかける。
「店長、コレのVネックって置いてます?」
「あっ、それならあっちにねぇ・・・」
そう言う店長越しに見えたのは、アイバくん・・・?
「あっれ?」
階段の上を覗き込むと、にこやかに手を挙げてアイバくんが降りてきた。
「奇遇だねぇ、何、今日休み?」
「あっ、うん、カザマが急に来れなくなっちゃって、ひとりで買い物。えっ、サクライさんも?お休み?」
「えっ、何、二人とも知り合いなの?」
「えぇ。」「そう!こないだウチんとこ取材に来てくれて。」
「へぇ、そうなんだ?凄いね、偶然だね。」
先に会計を済ませてアイバくんを待つ間、この後誘っていいかな、もう帰るのかな、って、気持ちが落ち着かない。
「お待たせ!やぁ~、びっくりしたねぇ!くふふふっ!」
「うん、驚いたね。」
笑顔が眩しくて、占いってこの事か?・・・なんて柄にもないことを考える。
「えーと。」
笑顔が緩んでアイバくんが言葉を探してる。
どうする?
誘う?
でも何て言えば不自然じゃない?
つーか予定あるかもしれないじゃん。
・・・とりあえず探りを入れてみよう。
「アイバくん、この後は?どこか行くところあるの?」
「あっ、ううん?特に・・・サクライさんは? 忙しいんじゃないの?」
「いやっ、今日は完全なオフで・・・」
本当はこのあと老舗の唐揚げ屋の定食を開店と同時に食べに行って、それからその先にある輸入雑貨店でワインとクラッカーとチーズを買ってから帰ろうと思っていたけれど・・・予定変更!
「あのさ、」「あのっ、」
「ハハハ」「くふふっ」
同時に話し出して笑い合う。
「いいよ、何?」「あっ、どうぞどうぞ、サクライさんお先に。」
「そ?・・・あのさ、アイバくんさえ良ければ、このあとメシ行かない?」
「うん、行く!」
「良かった」
断られなかった安堵と、迷いなく『行く』と言ってくれたアイバくんの笑顔が可愛くて、嬉しさがこみ上げる。
「アイバくんは?何言おうとしてたの?」
「いやっ、せっかくだからメシでも、ってゆおうとしてた!くふふふっ!」
「ハハ、そっか!」
なんだか妙に胸がくすぐったくて、温かな気持ちになる。
肩書きも名声も関係なしに築かれ始めたこの友情を大切にしていこうと思った。