これまでのお話
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[同日金曜日 23:30 Side.S]
雅紀の腕に包まれてベッドん中・・・
いつもだったら雅紀が多少乗り気じゃなくても、より甘い時間へと押し切れるのに・・・
今夜は心に広がったわずかな黒い濁りにブレーキをかけられ、複雑な想いを抱えたままこの強張ったカラダを横たえ、愛しい人の心音を切なく聞く。
どうする?聞いてみるか?
松潤とのコト。
鍵のコト。
聞いたら案外簡単な答えが返ってくるのかもしれない、俺の思い過ごしかも?
そうだよ、いつもの会話のまま普通に聞けばいい。
・・・だけど藪をつついて蛇を出すようなヘマもしたくない。
さっきの、雅紀の腕に押し返された感覚が両肩に蘇り、背中に変な汗がジワリと広がる。
拒否・・・されるって、あんな感じなんだな・・・
今まで考えたこともなかったけど・・・。
触られた肩から筋肉が収縮してカラダが鉛のように重く動けなくなり、内側からじわじわと広がる疑念の冷たい感覚が、雅紀の愛を自分に留めておける自信を堅く凍らせていく。
今こうして触れているのにまるで他人かのように雅紀を遠く感じる。
指先が、冷たくなる。
普通を装ってるけど・・・
優しい雅紀は、本当の気持ちを言い出せないでいるのではないだろうか・・・
気付かないフリをしてまでもこうしていたいと思うのは俺のエゴ・・・だよな。
雅紀の幸せを願うなら・・・
俺が身を引けばいい・・・
いつかそんな日が来たらスマートにそう振舞えるつもりだったはずなのに、いざこうなってみたらなんだよ俺、全っ然ダメじゃねぇか・・・
グルグル回る重い考えに囚われているうち、俺の頭を撫でていた雅紀の掌がその動きを止め、頭の上で規則的な、俺のこの感情とは縁遠いくらいに平和な寝息が聞こえ始めた。
「・・・雅紀?」
返ってこない反応にフゥと浅くため息をつき、頭の上の、力が抜けて愛おしい重みを増した雅紀の腕を、そっと、起こさないように外してその腕の中からするりと抜け出す。
ベッドサイドに立ち上がると、月明かりに照らされて眠る愛おしい姿を肩越しに見下ろし、そのまま視線を流して空を見上げ、
ゆっくりと寝室をあとにした。
... to be continued
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