ここ15年ほど、家では和服で過ごしている。和服といっても浴衣だ。以前は角帯などを締めて着流し風にしていたが、最近は面倒くさくなって、浴衣についているものを締めているので、温泉客か入院患者にしか見えない。しかし、舞台で35年、紋付や装束を着続けて来たので、和服姿は堂に入っている(と思う)。
15年前に、部屋着を和服に切り替えたのにはある事件があった。朝、起きたら右ひざが全く曲がらないのだ。みると、ひざの皿のちょっと下が赤黒く腫れている。ひざがまがらないと布団から立ち上がることも出来ない。這ってなにかつかまれるものを探して
、なんとか立ち上がるまでに30分かかった。病院に行くのに、外出着を着るのに困った。ひざが全く曲がらないのでズボンが履けないのだ。そこで思い立ったのが和服。これならば立ったまま着られる。その日は寝巻きに角帯、それに半纏かなにかを羽織ってタクシーで病院に行き、ひざにたまった血を抜いてもらった。たしか太い注射器で2本分(200~300ml)くらいか。
子どもの頃から正座ばかりしていた。幼稚園に通うまでは正座以外の座り方をした記憶がない。小中高と、尺八の稽古をするときはかならず正座。大学のときも椅子があるのに、座布団をしいて正座で練習をしていた。古典邦楽の演奏家、落語家、僧侶、お茶、お花、等等、正座が仕事の必須である人にとって、ひざの具合をいかに保つかは一生の課題。たいていの人は、ひざに爆弾を抱えている。私もその口だった。ひざまわりの細い血管がボロボロになっていたらしい。
病院からの帰りがけに呉服屋で着流しを買い、ケアショップで杖を買った。帰宅して、家でも外でも和服で過ごした。これがとても着心地がいい。その日から和服生活が続いている。さすがに杖が要らなくなった頃に、外出着は洋服に戻したが、部屋着は和服のままだ。
結婚した頃から、ステテコを下に穿くようになった。浴衣にステテコ、完全に昭和のオヤジである。昨日のAMラジオで、ふんどしが夜寝るときにとても快適だと聞いた。ちょっと興味が沸いている。ただ、和服にふんどしだと、昭和のオヤジを通り越して、絶滅危惧種にでも認定されそうである。
来週からまた渡米。今度はコロンビア大学でレッスン&コンサート。ホテルは常宿のミルバーン♪。欧米のホテルに寝巻きの用意はないので持参。もちろん浴衣。今日あたりにふんどしを仕入れて、ニューヨークでふんどしデビューというのも悪くない。