良心的な歴史観が平和を呼ぶのだ。 | 空堀ホイホイ

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増補 中世日本の内と外 (ちくま学芸文庫)/村井 章介



ここのところ、領土問題が騒がしいですがそれに呼応するような形での増補再刊のこちらの著書。

本屋でぱらぱらっと立ち読みして買いました。

簡単にまとめると、アジアは古代から中世にかけて国境線とかあまり意識に無く、活発な貿易交流が盛んに行われていたのです。

故に港町には異国文化が自然に混じり溶け込み、当然混血も進んでいたのです。

当時の法律では裁ききれないような遺産相続や利権にまつわるトラブルも多く、国境線なんぞあって無いようなもんだったのです。

国家権力からすればそんな状況を規制することによって、なんとか既得権益を得ようとするものです。

しかし当時は海賊が横行しまくってたらしく、その把握は困難であり、江戸時代の鎖国制度がきちんと施行されるまではアジア情勢との関連や影響によって紆余曲折してきたとのことです。

平家の日宋貿易から鎌倉時代を経て、室町時代には足利義満が明から日本国王として認められたりします。

江戸時代は鎖国と称しますが、厳格な法整備の下、西洋諸国も取り込んだむしろ積極的な海洋貿易が展開されていました。

古代から縄文時代に遡れば、無秩序に自由闊達な交流があったに決まってます。

琉球はきっとその重要な役割を負っていたと思います。

海流も太古から知り尽くされていたと思います。

天文学とあいまって現代の我々が創造を絶するスケールで海洋交流が繰り広げられていたと思います。


著書の中では平安期から日本人に生まれた神国思想は他国への蔑視、更には攘夷思想へとつながり醗酵し、明治維新後、急激な西洋思想への転換とともに皇国史観、愛国思想を創り出し、戦争への道を辿り、さらに敗戦後の日本人の閉塞的な思想と独善的な対外史観になっていると指摘されています。

様々な史実の検証がされていますが、興味深かったのは元寇により日本が侵略の危機に陥った際、神風が吹いたことがその後の日本人のマインドに大きく影響しているとの示唆です。

元寇によって被害を被ったのは日本の他にも高麗の方が酷かったし、ベトナムなんかも戦いを余儀なくされていました。

ところが日本にだけ神風が二度も吹き、神国思想が一層根づき、太平洋戦争の悲劇に繋がるマインドを醸造したかもしれません。



これからの歴史観は一国からの一方的な国史を越えて、他国との比較、関連を意識した歴史観が求められると、様々な方が仰られています。

特に日本は島国であり物理的に孤立しがちな風に捉えられがちですが、歴史を調べると、結構活発にアジア周辺諸国との交流、交易が盛んに繰り広げられていた事実があり、開国派と鎖国派のせめぎ合いが繰り返し行われていたようです。

最近の領土問題も、アジア周辺諸国による比較関連史学によってポジティブに理解を深め合える機会になってもらいたいものです。

また、ここのところ大きく取り上げられているTPP問題ですが。

「なんとかなるんじゃないっすか」とか楽観的なことを言ったら袋叩きに合いそうですが、多分、アメリカはうまくいかないと思いますよ。

ある程度、日本人は覚悟したほうがいいと思いますが、今でも十分日本は占領され、アメリカに搾取されてますから。

それよりも、やはりこれからはアジアを見据えた外交、貿易です。

マスコミに煽られずに民間レベルでの交友の機会を大切にしたい。

良心的な歴史観が平和を呼ぶのだ。