2018年に週刊文春で書いた「老けない最強食」 | 笹井恵里子のブログ

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執筆は苦手、でも企画立案と取材が大好きなジャーナリストです。

 先日、プレジデントで連載している記事を新たにタイトルをつけてもらってオンラインに転載しました。

 

100円で買える栄養素の量がダントツ…1日「たった1杯」で熱中症・認知症・糖尿病を防ぐコンビニで買える飲み物とは?

 

 答えは「牛乳」なのですが、

この記事の冒頭に、プレジデントオンラインで牛乳批判の記事を見かけ、その記事が一時期、ランキング1位に輝いていたことを書きました。そのあとこうも書いています。

<何かの食品を攻撃する記事を書くのは実は簡単なのだ。たったひとつの論文を根拠にして、デメリットを述べればいいからだ。それよりデメリットをふまえても「この食品は良い」と書くほうがハードルが高い。どれだけ多くのメリットを述べても、たったひとつのデメリットにかき消されてしまう。記事としても広まりにくい。それでもあえて「一日一杯の牛乳には、これだけの健康効果がある」と、書きたい>

 私はプレジデントオンラインで出ていた、その牛乳批判の記事を見かけた時、本当に本当に悔しかったのです。編集部に対しても激しい怒りがこみあげました。

 だからこの原稿を書いた時、プレジデントオンライン編集部にいた女性編集者に「こういう記事を書きました」と、あてつけのつもりで上記記事の原稿を見せました。でも私の嫌味はまったく通じず、「『いいものをいい』という姿勢が大切ですよね!」と……。そうじゃないんだよ! と怒鳴りたくなりました。

「いいものをいい」って、じゃあその「いいもの」は何を根拠にするんだって話です。

 

 私は食品の記事を書くなら、メディアが自分の力で「いいものを見つける」「物事のいい側面を見る」ことが大切だと思っています。

 

 10年前、私がサンデー毎日にいた頃は、「飲んではいけない」「食べてはいけない」の大ブームでした。

 でも私はそういう記事を書きたくなかった。理由は二つあり、もともとこの仕事をする際に、読んだ人が明るい未来を思い描けるような原稿を書きたいと思っていたことがひとつ、もうひとつは、私の母はものすごく食事に気をつけていたけれど若くして亡くなりました。同じようにどれだけ気をつけていても病で亡くなる人もいれば、ヘビースモーカーで大酒飲みでも100歳まで生きる人もいます。私ができることは、「リスクを正確に(針小棒大な記事をつくらない)」そして「日常で自分ができること」を伝えることだと思っていたからです。

 

 けれども、そんなまっとうな?記事が読まれるわけもなく、当時、大和田潔先生(あきはばら駅クリニック院長)の前で、「結局、私が書く、『これがいいよ!』という記事は読まれないんだ」と、よくぶつくさ文句を言っていました。すると大和田先生はそのたびに「笹井さん、目標が小さいよ。焼畑農業(何かを批判するだけの記事)の未来には何もないんだよ」と励ましてくれました。

 ですが何を言われても当時の私は、心の中で「結局、批判記事じゃなきゃ売れない。読まれない。売れなかったら負けなんだ」って泣いていた気がします。

 

 それからしばらくして、2017年から2018年、週刊文春が私に「老けない最強食」という特集連載を託してくれました。

 

「老けない最強食」の「牛乳」の回の時、ランキングをつくる指標が見つかりませんでした。締切が5日後に迫っているタイミングで、どうすればいいかわからない。とりあえず(今回のプレジデント連載にもご協力いただいた)管理栄養士の小山浩子さんに取材に行きました。

小山さんから

「ある料理人の方が、日本で一番おいしいのは鳥取の牛乳と言っています」と聞きました。

 ただそれだけの情報で翌日に鳥取に飛び、現地で、鳥取にいる牛はすべてが白バラ牛乳になること(例えば北海道にいる牛はさまざまなメーカーの牛乳になりますよね)、また全頭健康診断を実施していることを知りました。

 それで詳細は長くなるので書きませんが、簡単にいうと「老けない牛乳」とは、都道府県別「牛の健康診断実施率」にしようと思ったのです。

 

 週刊文春で記事にし、白バラ牛乳は前年同月比で売り上げ増になり、「文春砲 援護射撃」という見出しで地元新聞に取り上げられました。平井知事にもお目にかかることになり、直接お礼を言われました。

 その後、白バラ牛乳をつくる酪農家さんのところに行く機会がありました。酪農家さんは、泣いていました。

「ほかのメーカーなら使える生乳も、白バラ牛乳の厳しい基準では廃棄しなければならないこともある。億の借金を抱えて、生乳を捨てながら、自分たちがやっていることは間違いじゃないかと思った。でもあなたが書いた記事を見て、反響があって、今までの苦労が報われたと思った。ありがとう。これから、この記事に恥じない牛乳を作っていく」と。

 

 食の記事を書く時、その言葉がいつも心にあります。

 読者と取材先が明るい未来を生きていけるような記事を書いていくことと、私はあの涙に恥じない原稿を書いているのか、ということです。

 

 メディアが「ある食品を批判するだけの記事」を書くなら、その批判は、あなた自身が「借金」を背負ってまで書きたいことなのか? と私は問いたいです。借金を背負ってでも、読者にこの事実を伝えたいーーというなら、それはきっと真実だから、書いたほうがいいでしょう。

 でも多くは、単なる売り上げ稼ぎじゃないんでしょうか。

 

 老けない最強食で、小山浩子さんは生産者の姿を

 管理栄養士の望月理恵子さんは教科書的ではない食の楽しみ、たとえばジャンクフードでさえ工夫すれば体に悪くなく食べられることを教えてくれ、

 そして週刊文春は、私にこのブランドをくれました。

「老けない最強食」は私の原点、同時に完成形でもあり、ここに込めた「食の記事を書くこと」への思いは誰にも負けないつもりです。