タンス預金の海外移転が危機的にムズくなっている件 | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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50代グダグダちょい悪おやじMr.Gの趣味と海外投資に関するコラムです。
香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!

 

最近になって、親や祖父母の死亡後に数千万円単位の現金(タンス預金)が意図せず発掘されるケースをよく耳にする。

身近なところでも結構あることを考えると、きっと日本中では相当巨額のタンス預金が毎日発掘されているに違いない。

 

真面目なひとは税理士に相談してちゃんと相続財産として計上し、遺産分割協議書に載せて相続人間でもめ事があとで起こらないようにして、相続税もちゃんと払う訳だが、そうでない(不真面目な)ひとも当然いる。

 

要は、”ぽっぽないない”してしまうひとも居るということだ。

 

これは、完全に脱税だが、その現金がどこから来たどのような性質の現金か?また、どれくらいあるのか?によって多少は考え方が異なってくる。

 

タンス預金がそもそも補足されているかどうか?という問題については、国税が運営するKSK(国税総合管理システム)という警備保障会社みたいな名前のシステムによって、補足されているので必ず申告して下さいというような記事が散見されるが、全てが把握されている訳ではなさそうだ。

 

本来申告すべきであると推測される所得と、実際の納税額の差から隠された所得を発見するシステムだと思われるが、そもそも所得自体が現金取引で発生したものである場合などは非常にわかりにくいだろう。

 

100兆円以上あると思われるタンス預金の全てが補足されているのであれば、わざわざお札のデザインを全面切り替えする必要もない。

 

さて、複数の法定相続人が居た場合には、それを誰が見つけたのか?も問題になってくる。

だれかが偶然見つけてこっそり着服してしまった場合、もともと誰も知らないあると思っていなかったものなので、誰にも分らないという事もありうる。

 

金額的には、数百万程度あれば、ほぼ誰かがぽっぽないないしてしまうか、遺産分割協議書には載せずに現金で相続人間で分けるのではないかと想像する。

 

ここで、今年の7月から、新しいデザインのお札が発行され流通し始めるという、「新円切り換え問題」を考えたときに、発掘された現金は旧札になってしまうので、将来使いづらくなる。

 

また、使う時に銀行にいちど入金して両替するなどした際に、「なかったもの」が表に出ることになり、その源泉について疑われることになるので、相続税を払っていない場合には間違いなく問題になるだろう。

 

株価は市場最高値を記録更新中だが、日本円という通貨の価値は下がる方向にあり、最悪は広義の財政破綻であるハイパーインフレに見舞われる可能性は高まっている。

 

そういう状況を深刻に捉えるひとのところで、突然数千万円単位の現金(タンス預金)が発掘された場合、もしそれが現行札(福澤諭吉札)であれば、海外に物理的に持ち出してUSドルなど外貨に変えておくことを考えるのは普通だ(まあ異常な考えではないと思うが)。

 

もちろん遺産相続が絡んでいた場合には相続税を払う前提で構わないが、ぽっぽないないしたいと考える悪い人(不真面目な人)は、現金のままなかったものとして海外に持ち出そうとうするかもしれない。

 

賢明な諸君らは既にご存じだとは思うが、海外旅行の際に「100万円相当額以上の現金(外国通貨を含む)・小切手・約束手形・有価証券・重量が1キロ以上ある、純度90%以上の金地金」などを持ち出したり、海外から持ち込んだりする場合、外為法第19条(及び外国為替令第8条の2)によって、日本の税関に届出が必要であり、無届で行うと、5年以下の懲役もしくは5百万円以下の罰金が科せられたり、6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられたりという罰則規定が適用されてしまう。

 

それでも、過去には無申告で億円単位のお金を香港やシンガポールに運んだひとたちはいっぱい居るし、CRSの情報共有が始まってからもそういう大物が脱税などで何故か挙げられてはいない。

 

日本の政治を仕切っている政治家の方々も少なからず含まれると思うが、彼らの海外資産が暴かれることはなさそうだ。

 

だいたいビビって真面目にこのような法律に従っているのは、たかが数百万円程度のお金を持ち出そうとする小物ばかりだ。

 

持ち出しに関しては、それが200万でも2,000万でも無申告なら違法は違法だが、日本側の空港税関では今まではあまり持ち出しに関しては真面目に取り締まる気は今も昔もなかったかのように思われる。

 

多分徴税の効率上の問題と、警察と税関の連携の悪さ及び税関のマンパワー不足が原因だったのではないかと想像するが、基本的に持ち出しの際には課税できないので、持ち帰りの際に見つけて課税するほうが遙かに効率的だからだろう。

 

それゆえ、持ち出しよりも持ち帰りの際により注意が必要となるわけだが、多くの人はその事がわかっていない。

持ち帰りに関しては、見つかれば即課税対象となるので、現金も金の現物など無申告の持ち込みはお勧めしない。

 

過去にも何度も話している気がするが、現金の海外への持ち出しは日本側の持ち出し規制が強化されるよりも早く、海外側の空港税関での持ち込み制限や金融機関(銀行)での入金時の原資証明(source of fund)の提示要求などが強化されたため、今では香港のHSBCに日本円をそのまま窓口で入金する場合、原資証明無しなら最悪入金できないか、できても1日に100万円くらいと考えた方がいい。

 

タンス預金の場合は、当然銀行から引き出した通帳の記録など無いわけだから、そのままでは巨額な入金はほぼ不可能だ。

 

窓口ではなく香港国内のATMで入金する場合は、香港ドルであれば1日150枚(最大100,000香港ドル)まで入金か可能なので、重慶マンションの両替屋で日本円を1,000ドル札に両替すれば100,000香港ドル=約200万円までは入金が可能だ。

 

窓口で入金する場合でも、香港ドルに両替してから入金する方が、原資証明無しで入金できる金額は多くなる。

それでも1日に100,000香港ドル=約200万円くらいが限界だろう。

 

やったことはないが、両替屋で小切手に両替すれば、小切手のATMでの入金は金額の上限制限がないので、100,000香港ドル以上でも小切手による入金は理論上可能だが、可能性としては、銀行のセキュリティーに引っかかって電話でその入金内容について問い合わせを受けることになるだろう。

それに英語でちゃんと対応してその源泉について説明ができなければ、最悪口座は凍結される。

 

このようにタンス預金が数百万ではなく、数千万規模になってくると、仮に日本から持ち出して香港など海外に持ち込めたとしても、銀行に入金するには途方もなく時間と手間がかかる。

 

ましてや、億円単位の規模となれば、現金のままでの移動は極めて困難というか、八方塞がりで普通では不可能と言えよう。

 

ただ、それは銀行に入金することが困難なだけで、もし貸金庫でも持って入れば現金のまま金庫に寝かすことはできる。

 

そして、仮に銀行に入金できたとしても、年末の残高はCRSの情報交換で税務当局の知るところとなるので、海外にいきなり数千万や数億の資産が湧いて出たなら、当然その源泉や所得について疑われることとなる。

まだ今のところ、そのようなケースは多くはないが、その気になればネタは揃っているので金額のよっては税務署の餌食になるかもしれない。

 

例えば、その銀行にある現金残高を、サンライフ香港のサンジョイのような保険商品に転換したとしてもCRSの報告義務に基づいて年末の時価総額(解約返戻額ベース)が税務当局の知るところとなるのは変わらない。

 

ただ、サンジョイに転換した場合には、損益分岐点の7年目までは、解約返戻額ベースの時価は相当圧縮されるので5,000万円を超える金額であっても7年間は国外財産調書提出の対象にならないようにはできる。

 

このように、原資証明のない出所のはっきりしない巨額の現金は、日本に置いておいてもいずれは銀行に入金するか、両替することによって当局に補足される運命であり、それから今更逃れようとしても海外に現金のまま移転するにも時間が足りないという詰んだ状態だ。

 

7月3日以降に、新円札が流通し始めても、旧札は使えると思っているひとが多いし、その兌換性については国が保証しているものの、現実的に財務省が今の時点で公表していることから確実なのは、少なくとも日本の銀行のATMではしばらく新旧札どちらも入金することができるという事だけだ。

 

窓口で両替する場合には手数料を取られるかもしれないが、それも今はわからない。

 

店舗など商売を営んでいるひとであれば、現金の売り上げがいくらかはあるだろうが、はたして7月3日以降に旧札をその店で受け取るかどうか?は店の判断ということになるだろう。

 

多かれ少なかれ、店舗は現金の売り上げを「ぽっぽないない」している場合が多いが、旧札で受け取ってしまうと銀行に入金しなければならないのでないないはできない。

 

また、パチンコ業界では、新札が発行されたらまた休廃業するホールが増えるというのが通説になっている。

そのワケは玉やメダルの貸し出しに使われているサンド(お札を玉に交換する両替機的なもの)の中にあり、サンドには紙幣識別装置、通称ビルバリ(ビルバリデーターの略)が搭載されているが、新札が登場するとこのビルバリノの交換が必要となる。  
交換に必要な金額はメーカーによって異なるようだが、おおよそ1台当たり2万円くらいかかるようだ。

これに台数分をかけると、500台くらいの中規模店でも1千万円を超える費用がかかることになる。

 

これは、ラーメン屋などである券売機や自動販売機、駐車場の精算機や両替機も基本的に同じだが、中のデータをどこかで入れ替えないと新札は使えない。

 

それらの経費は国が持ってくれるという話しではないので、順次自腹で入れ替えて新札しか使えなくなるだろう。

 

このように市場では、しばらく新旧札が混在して流通すると思われるが、最終的には銀行を媒介として全て新札に切り替わっていく。

 

そのプロセス上で、タンス預金や現金の売り上げは補足され、ぽっぽないないはできなくなる。

 

問題は、現金だろうが、預金だろうが、このまま円安(国内インフレ)が進めば、円の価値は少なくなって(腐っていく)いくということだろうが、殆どの国民は30年間なかったインフレがこれ以上進むとも、円の価値がこれ以上暴落するとも思っていないようだから、国にとっては有り難いことだ。

 

私なら間違いなく、7月までに福澤諭吉札の在庫は、日本で使い切るか、海外に持ち出してUSドルに変えておく。

 

海外の銀行口座を持っていない人であれば、すぐにでも香港に飛んで、今ならまだ作れるHSBC香港(スタンダードチャータードでもいいが)の口座を取りあえずは作っておくべきだろう。

 

逃げるときは、少しでも早いほうがいい。

 

既に手遅れかもしれないが、荷物の暈(かさ)が少ないほど、逃げやすいかもしれない。

 

荷物(円資産)のない人は、逃げなくてもいい。

 

もちろん、いつ起こるかわからない地震や、戦争のようなことを恐れるのであれば、逃げたいところだが、カネのない日本人を親切に受け入れてくれる国というのは、日本よりもリスクのある国しかない。