オフショア積立を円安で解約という残念なケース | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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50代グダグダちょい悪おやじMr.Gの趣味と海外投資に関するコラムです。
香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!

 

フレンズプロビデント、スタンダードライフ、RL360、ITA、FTLife、サンライフ香港など、オフショア籍の金融商品を契約している人の中には、この円安で支払いが苦しくなり停止や減額を考えたり、この円安に乗じて為替益の確定を目論んで解約してしまうする人が多いようだが、少し冷静に考えてみて欲しい。

 

多分、円安はもっと進むだろうと思われる。

日銀が利上げできない状況のなかで、米FRBの金融引き締め政策は当面終わりそうもない。

それだけ米国のインフレ進行度合いは半端ない。

日本においてもドル円為替の問題以上にインフレ問題のほうが深刻だというのが現実だ。

今は日本国内に円資産だけを持っていると明らかに負けなのだ。

いくら政府が大丈夫だとプロパガンダを打とうが、周りの多くの人たちが日本円だけを日本の金融機関に持っていようが、冷静に状況を見て負けを認識したほうがよい。

 

為替に関して言えば、1ドル=135円が130円になっただけで相当円高に振れたと感じてしまうほど、円安は短い期間の中で我々に既に定着してしまっている。

想像はしにくいだろうが、1ドル150円とか200円とかの円安を想定しながら暫くは生きていかないとしょうがないのだ。

 

とは言え、日本国内で収入を得て日本国内で生活している日本人は、このインフレと戦って生活を維持していくためにインフレをカバーできる収入増が現実には不可欠だ。

でなければ生活はどんどん苦しくなる一方だ。

 

既に余剰資産(主に預金)が有る人は、国内のドル預金とか、純金投資とか、ドル建て終身保険とかではなく、物理的に海外の金融機関や保険証券にドル建てで資産を移転すればよい。

しかし、余剰資産の無い人(主に情弱な若年層)が、「貯蓄から投資へ」という政府のキャンペーンに煽られて 毎月のなけなしの収入をiDeCoや積立NISAのような投資に吸い取られていく状況は救いようがない。

 

積立投資をやっている人たちの大半は、毎月なにがしかの収入がある人の筈だ。

インフレを円安が進めば、生活は苦しくなって当たり前だが、そのインフレ対策の為に積立をやってきたはずだ。

確かに過去30年は賃上げが殆どなかったが、同時にインフレもなかった為、日本円の価値の低下とそれに伴う実質的な収入の減少に気付かなかっただけなのだ。

 

インフレどころか、日本経済はデフレスパイラルに陥っていたが今は違う。

日本に限らず世の中はコロナやSDGsやウクライナ問題からインフレが急激に進行している。

そしてそれ以前から、世界では平均すれば毎年経済成長と共にインフレが進んでいたが、日本だけは30年間インフレが抑制されていた・・・というか経済が成長しなかった。

日本国内の物価と給与水準は、経済成長の停滞と共に30年間まるで時が止まっていたかのようにモラトリアム化していたのだ。

そして今、その30年分のギャップがまるで巨大地震の発生メカニズムのように一気に埋まろうとしている。

 

これは日本にとっては南海トラフ大地震級のインフレに繋がるかもしれない。

 

給与所得で食っている人たちは、いずれにしてもインフレをカバーできる賃上げがなければ困窮は避けがたい。

 

政府が企業に賃上げを強要するか、政府が賃上げの代わりにマイナポイントをばらまくか?

 

いずれにしてもそういう行動はインフレをさらに加速させることになるが、賃上げは何らかの形で起こらざるを得ないだろう。

 

そして、その賃上げは企業のサービスや商品の価格に転嫁され、さらにインフレは進む。

 

そういった状況は20年前に起こっていてもおかしくはなかったが、今まで起こらなかった。

 

その間に、幸運にもオフショアの積立や保険というものに出会い、今まで地道に続けて来た人にとってはラッキーこの上ない話の筈だ。

 

しかし、今この程度の円安での利確はお勧めできない。

 

10年以上ドル建ての支払いを日本の円決済カードで続けている人であれば、既に相当額のUSドル建て資産が証券上にあり、為替だけでも30%近く利益が出ているかもしれないが、おそらくこの先数年の間に我々が経験する為替変動やインフレは、こんなものではないだろう。

 

まだ数年しかやっていないひとにとってはこの急激な円安の進行は確かに痛い。

500ドルの積立は今や7万円がカードから落ちる。

 

「こりゃたまらん!もうやめよう」とか、減額や停止を考える事は容易だが、そう思った時点でこのゲームの負けは確定だ。

 

それでも、もしこの先10年後、20年後を考えたとき、USドル建ての資産を海外に持っていた人だけが生き残れるとしたら、必死で続けるに違いない。

 

少なくともお札が切り替わる2024年の春までは、様子を見た方が賢明だ。

場合によっては、新しく発行される渋沢栄一の1万円札は今の1000円の価値しかないものになるかもしれない。

既にNYではラーメン一杯はチップ込みだと3000円近い値段らしいが、今まで1000円で食べれたラーメンがインフレで1万円になったら、結果として1万円の価値が1000円になるということだ。

 

日銀の黒田さんも、口を滑らして「国民はインフレを受け入れつつある」みたいなことを言ってしまったが、実際には1ドル=150円くらいになってもみんなが死ぬわけでもない。

1ドル=300円になっても、富裕層にとってはどうということもない。

 

最終的には資産そのものの備蓄のないエンゲル係数の高い貧困層は致命的な打撃を受けるかもしれないが、政府にとってそのような貧困層はどうでも良いのだ。

 

問題は、日本の経済の行く末や日本円という通貨の未来に関して、あまりにも多くの国民が楽観的すぎる事だ。

 

日本に生まれ、日本で生きてきた我々は、楽観的に将来を見なければ前に進めないという現実はある。

 

しかし、我々個人の未来は、日本という国やその国の経済と共に貧しくなったり、最悪破綻する必要はない。

 

終戦から77年経ち、戦争を経験した世代の人たちはどんどんこの世を去って絶滅しつつある。

戦争を知らない我々が、今目前に迫る戦争の危機に対して、日本という国の置かれている状況や立場を冷静に考えたとき、楽観できる要素は限られている。

財源はともかく、防衛費(軍事費)は増えざるを得ないだろう。

 

貧富の差は拡大し続けており、このままでは日本の経済はますます一部の大企業に依存しなければならなくなり、政治の実権は一部の富裕層に委ねられてしまう。

 

ひろゆき氏が、非富裕層側の立場に立って、その不公平さと余りのチャンスの差に着目し、富裕層のストック資産に課税する「資産課税」を推奨したことがウケており、それと関係あるかどうか金融庁とのコラボ動画が炎上したりもしているが、彼の言っていることは案外正論かもしれない。

しかしながら政府が資産税や財産税というストック資産に課税する方針を打ち出したら、まさに日本は中国以上に社会主義的な国になってしまうことが危惧される。

 

非富裕層は、圧倒的に搾取される側であり、それに刃向かえる手段があるとすれば、日本国内の金融機関には預金せず、日本国内では一切投資せず、保険も買わないことくらいだろう。

 

昨年末の統計では、国民の金融資産総額が初めて2000兆円を突破したそうだが、その中で1000兆円以上ある国民の現預金は、最も危機に晒されている。

 

日本国内に1000万円も貯金のないほとんどの国民にとって、他人の何億もの預金がどうなろうと知ったことではないだろうが、政府としてはこの1000兆円現預金を投資に回して欲しいという考えなのだろう。

 

日本国内で投資に回すくらいなら、日本国内でもっと消費してもらう方が健全だ。

日本円の使い方は、海外に飛ばすか、腐る前に日本国内で使い切ってしまうかのどちらかしかないように思われる。

 

それもあと1年半くらいしか行動を起こすチャンスはない。

 

今オフショア積立投資を既にやっているひとが、折角のドル箱を円安を理由に解約するなどという行為が如何に愚行かがおわかり頂けるだろうか?

 

100メートル走で20メートルくらいハンディをもらっているひとが、途中で棄権するようなものだ。