円安はどこまで進むのだろうか? | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!

インフレと円安のスパイラル攻撃に翻弄される我々日本人だが、このまま1ドル=150円を超えて円安の進む可能性はあるのだろうか?

 

正直どこまで進むかはわからないが、個人的にはどこまで進んでも驚きはしない。

少なくとも、また以前のような円高時代に戻る可能性は極めて低くなったとは思う。

もし、奇跡的に円高に戻ったら素直に喜べば良いだけだ。

 

少なくともこの20年間、今回ほど円安の危機が大きくメディアに取り上げられたことはないので、普段為替や物価など余り気にしていない人たちも、なんか変だなと感じ始めたに違いない。

 

私は為替の専門家でもそれを分析してFXのトレードで食っている人間ではないが、今のインフレと円安の同時進行は雰囲気的にはヤバそうだというのは感じる。

 

実際には、アメリカのインフレ侵攻度合いは相当ヤバいので、米ドルの価値は随分下がっているにも関わらず、その米ドルと比較してもさらに安くなってしまっている日本円はマジくそヤバい状況だと言わざるを得ない。

 

この20年間の日本の経済・金融政策の膿が一挙に出た感じだ。

あとで振り返ったときには、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーと原材料価格の高騰によるインフレと円安というようにあっさりと本に記載されるのだろうが、そもそも潜在的に積み上がってきた問題があり、それを対策せずに先送りにしてきた結果の崩壊だというのが実際ではないかと思う。

あるいは、誰かの意図的な?

 

それでも、国民の現実的な危機感の度合いとしては、1ドルが150円を超えるような円安になるかもしれないと現実に思っている人は、全体の10%にも満たないレベルなのではないだろうか?

 

ただ、コロナ渦の収まらぬままロシアのウクライナ侵攻による有事リスクが発生するという世界を取り巻く異常な事態下で、日本というリーダーシップの欠如した弱々しい国の経済がこれからどうなってしまうかを考えると不安しかないのは事実だ。

 

エネルギーや原料価格の高騰によるインフレは世界で起こっている事であり、日本だけの問題ではない。そのなかで特にエネルギーや食料の自給率が低く輸入原材料に依存してきた日本が取るべき道は険しい。原材料価格の高騰によるインフレという最悪なヤツの影響を日本はもろに食らって最悪はハイパーインフレに見舞われる。

 

為替トレーダー目線でも、今は円安が進行する条件が揃っているということなので、普通に考えれば円安は進行するのだろうが、一体どこまで進むのかがわからない。

 

1ドル=130円が20年前のドル円レートと同じだというのは、20年前から円の暴落可能性を唱え続けて来た我々からすると20年間も予想外の円高が続いていたことになる。

 

さらに振り返ってみれば、32年前の1990年にはいちど1ドル=150円を超える円安を経験している。

バブルの終焉期、私が26歳で最初に結婚した年だ。

この頃の円安は、日本の経済もまだイケイケで、給与は毎年上がり続けていたし、将来の不安もなく、稼いだ金は遊びで殆ど使っていた。

 

それ以上の円安となると、40年近く(80年代)まで溯らなければならないが、その頃バブル真っ只中の日本では、1ドル=200円っていうのもごく普通で、誰もそれを円安だとは感じていなかったように思う。

円の購買力の低さなど誰も感じておらず、信じられないかもしれないが日本人が今の中国人のように海外のブランドショップで行列をなして煙たがられていた時代だ。

 

案外、過去の円高は覚えていても円安というのあまり記憶にないものだ。

それは心理的に円高を誰もが恐れていたというのもあるかもしれない。

最初に日本が1ドル=79円という歴史上最高の円高を記録した1995年に輸出型メーカーに居た私は円高が輸出型メーカーのコスト競争力に致命的な打撃を与えることを身をもって知った。

 

10年前には「1ドル50円時代を生き抜く日本経済」という浜矩子さんの本がベストセラーになっていたが、当時はドル暴落説というのも幅をきかせており、案外信じていた人も多かったように思う。

 

今となってはお笑いだが、今からたった10年前でも、多くの人が円高を真剣に恐れ、円安のことはあまり気にしていなかったように思う。

さすがに1ドル50円はないなとは思っていたが、なんで円高をみんなもっと喜ばないのかは理解できなかった。

 

最近よく登場するようになった、海外と日本とのインフレ格差を考慮した「実質実効為替レート」なる理解しにくい指標でみると、日本円の購買力は既に50年前のレベルに落ちているらしい。

 

この30年間くらい海外ではインフレが進んだが、日本では経済成長の停滞によるデフレ経済だったからだ。

 

50年前の1970年代レベルの為替レートは普通に1ドル=200円オーバーだったので、そんな時代が来るとでも言いたいのだろうか?

 

私ですら50年前の円の購買力と言われてもピンとこないが、50年前に生まれてすらいなかった人たちにとっては理解不能だろう。

 

 

今後、円の実質実効レートがさらに下落に向かうとした場合、最も求められることは賃金の上昇だというが、輸入原材料の価格が高騰している事に加え、賃上げも行えば、製品価格の値上げは不可避となり更にインフレは進む。

 

しかしながら、給与は上げてもらわないとこのままでは国民の生活は厳しさを増すばかりだ。

もし企業にその体力がないとすれば、政府による減税かベーシックインカムの導入しかないだろう。

 

いずれにせよ給与を上げれば、インフレは進む。

給与アップも、減税も、ベーシックインカムのバラマキも、経済成長(消費)に繋がらなければ単にインフレを加速させるだけの代物だ。

 

インフレを抑制するためには政策金利の引き上げによる金融引き締めが一般的だが、日銀(日銀の信用を守るために)はそれを進めることができないし実際に黒田さんは金融緩和の継続方針を示している。

日銀総裁として最後の砦は、日銀そのものなので日銀総裁としての判断は正しいと言わざるを得ない。

 

ドル売り円買いという為替介入も検討されているだろうが、歴史的なインフレに喘ぐアメリカがそれを容認することもないだろうし、売るべきドルの在庫も限られている。

 

つまり、今回のインフレに対して政府が打てる手はない。

 

敢えて言うなら、奇跡的に“日本でしか手に入らない何か”資源や技術がが発見されたり開発されたりして、日本の経済がもういちどバブルのような好景気に転じるしか可能性はなさそうだ。

 

何れにしても、日本で働き日本円で給与を得ている国民は、がんばって働いてより多くの給与を稼ぐしか今はできることがない。

 

もしくは、外国人がどうしても欲しいと思う日本でしか手に入らない何かを発掘して、それをネットで輸出するのが良いだろう。

 

あと、そうして稼いだお金は、日本国内では貯蓄も無駄だし、投資は絶対にしないほうがよい。

つみたてNISAやiDeCoも、ドル預金も、ドル建て終身保険も、たとえそれがドル建てであったり、海外に投資するものであっても、日本国内の金融機関を通じての投資は一切しないのが賢明だ。

 

既に日本円は、使わなければ劣化して価値が消滅していくゲゼル貨幣化していると思った方がよい。

 

貯蓄や投資に回すくらいなら、腐る前に使ってしまったほうがまだましだ。

 

可能なら海外に持ち出してドルに替えておきたいところが、コロナで海外渡航に制限があるのも運が悪い。

 

海外送金やクレジットカード決済による海外保険の保険料支払いなど、僅かだが海外への資金移転の手段が残されているというのは奇跡的なラッキーだと思った方が良い。

 

日本国内に流動性の有る日本円の金融資産がそこそこあるひとが、この奇跡的ラッキーな選択肢を選ばない理由はない。

 

日本政府としては、日本にある日本円の資産が海外に流出することがもっとも恐れるべきシナリオであり、今まで着々と仕込んできた預金封鎖計画が崩れるようなことがあれば致命的だが、大半の国民にはそのような行動力がないことも既に政府には見切られている。

 

その裏をかくのが、最も有効な戦略だと私は思う。

 

円安になって喜ぶのは、輸出比率の高い日本企業と、日本円を持たない(相対的に高くなった外貨を持つ)外国人だけだが、輸出をメインとするメーカーも今は生産拠点を海外に移してしまっているので、その恩恵は海外生産工場を含む円建ての連結決算の数字が良くなるという点に集約される。

 

増え続けていたインバウンド客が日本に外貨を持ち込んで大量に買い物をしてくれればある程度の経済効果が見込めたはずだが、残念ながらコロナ渦のせいでインバウンド客の大量来日も当面見込めないという間の悪さだ。

 

ハゲタカファンド的な見方をすれば、1ドル=150円などまだバーゲンセールからはほど遠い。

インフレによって円建ての物価が倍になるより早く、為替が1ドル=300円くらいになってくれば、海外投資家にとって日本の会社(株)や不動産が魅力的になるかもしれないが、いくら円が安くなっても価値の上昇が見込めない物に投資する馬鹿は海外には居ない。

 

この20年間はデフレスパイラルという魔物と戦ってきた日本経済だが、今後はインフレと円安の複合スパイラルというラスボスとの最終決戦が始まったのかもしれない。

 

やっとのラスボス登場に際し、いままでデフレスパイラルと金融緩和というジャベリン砲ならぬ黒田バズーカで戦ってきた黒田総裁の任期はあと1年となった。

 

今までの武器が有効ではなくなった責任を、かつてはその武器で対抗して成果を上げてきた人が取るとは思えない。

 

さて、この最強のラスボスとは今後誰がどのように戦うのだろうか?

 

こちらの最終兵器となり得る道具(ツール)は出現するのだろうか?

 

国民がラスボスにボコボコにやられてゲームオーバーってのだけは勘弁して欲しいものだ。