心のテンションが何で上がるのか?というはなしを先日しましたが、医学的にはどのような現象なのかを調べてみました。
「心のテンションが上がる」というのは「興奮する」=アドレナリンが出る?ということに医学的にはなるようです。
興奮したり、テンションの上がることがあまり無いということは、あまりアドレナリンが出る機会がないということです。
アドレナリンが出ないと問題ある?
おそらく、アドレナリンの分泌されるような危機的状況に遭遇することは現代では少ないし、現実の危機的状況は平和に安心して生きて行くためには必要無いように思われます。
アドレナリンは、「闘争か逃走かホルモン」と言われるように、基本的にサバイバルが必要な状況下で、戦うか?逃げるか?のどちらかに強烈に働くホルモンですので、そのような状況の殆ど無い平和な世の中ではあまり活躍する場が無いのでしょう。
アドレナリンが分泌される最も単純な条件は、「恐怖」を感じるときです。
ホラー映画や、絶叫マシンというような恐怖を感じさせるものに人間がわざわざお金を払って経験する理由は、アドレナリンを欲しているからかもしれません。
アドレナリンの一種であるノルアドレナリンは、「怒り」に対して多く分泌されるようですが、「怒り」もそこから攻撃や防御という行動に移行する、アドレナリンの作用を必要とするきっかけと言えるでしょう。
アドレナリンが分泌されると、心拍数や血圧が上がり、瞳孔がが大きくなって、運動量や呼吸、感覚が高まり、状況に対して立ち向かうか?それとも逃げるか?の準備が整います。
適度なアドレナリンの分泌がないと、人間は元気のない状態に陥りますが、過剰な分泌は過度にストレスがかかった状態となり、高血圧や糖尿病、不眠症などを引き起こす可能性があるようです。
お祭りや花火大会、音楽ライブ、映画など、擬似的な興奮を与えるイベントは、今のような平和な世の中においても人間の健康を維持するために適当に必要だということのようですね。
人間というのは複雑な生き物で、刺激や興奮も適当になければならないし、かといってそればっかりでは疲弊してしまうので適当な癒しや安らぎも必要です。
刺激も必要だが、癒しや安らぎもバランス良く必要だとは、全くめんどくさい生き物です。
「癒される」とか「幸せを感じる」というのはまた別の神経伝達物質が絡んでいるようです。
人間の神経が高ぶって興奮すること=楽しいと感じることや、幸せに感じる=気持ちよいと感じるのは、医学的にはアドレナリン、ドーパミン、セロトニンといった脳内で働く神経伝達物質が関係しているようです。
脳の中には約1000億個以上の神経細胞があるといわれ、これらの神経細胞同士の情報交換を円滑にすすめるために神経伝達物質が働くそうです。
アドレナリン、ドーパミン、セロトニンの3つは、いずれもストレスや意欲に関係するホルモンで、それぞれ役割が異なります。
このような神経細胞の働きは、AIが進化した時代においても、おそらくAIが最終的に人間の機能の中で研究対象として学習し、最終的にはそのシステムをプログラムとして取り込もうとするようなものかもしれません。
***アドレナリン以外の神経伝達物質***
☆ 恋をすると分泌されるドーパミン
ドーパミンも神経伝達物質の一つで、副腎髄質から分泌すされるホルモンです。
ドーパミンの主な働きは、人の行動を促す役割があります。
この行動には例えば運動や学習などが含まれます。
そのため、このドーパミンの分泌が減少すると、運動がしにくくなったり、物覚えが悪くなったりしてしまいます。
また、これが深刻化すると、皮質下痴呆と言われる人との交流を嫌う症状や、パーキンソン病が出る可能性があります。
こうしたことを防ぐために、ドーパミンの分泌が必要となるのです。
ドーパミンは人の行動を促す役割のほか、以下のような効果効能があります。
・集中力を高める
・身体機能を高める
・創造的な発想が出来る
・攻撃性を高める
こうした働きのほとんどは、ドーパミンが快感神経を刺激するためです。
そのため、快感神経系が刺激され適度に興奮状態になると、脳を覚醒状態にすることが出来るのです。
その結果、集中力を高められたりするのです。
ただし、ドーパミンの過剰分泌は、発言や運動のコントロールが出来なくなる症状を引き起こすことがあります。
そのため、変な行動や、恥ずかしい発言などをしてしまう可能性があるのです。
こうしたドーパミンを多く分泌させる方法には、アルコールやニコチンなどがあります。
ですが、これらを多量に摂取していると、だんだんと摂取量が足りなくなります。
これはドーパミンが十分に出ているのに欠乏状態だと誤解してしまうためです。
これを読むと、最近米国やカナダなどで合法化が進んでいるマリファナ(大麻)の効果とにているような気がするが、最近のマリファナ研究の結果では、マリファナの使用によってドーパミンの分泌は逆に抑制されると言われています。
だとすると、マリファナに含まれるテトラヒドロカンナビノール (THC)によって体内で生成されるカンナビノイドという物質が、ドーパミンと似た働きをするのではないかと思われます。
☆ 幸せを感じると分泌されるセロトニン
セロトニンも神経伝達物質の一つであり、落ち着きや安定感をもたらす物質です。
セロトニンの主な働きは、抑制系の神経物質であり、落ち着きや安定感をもたらします。
そのため、このセロトニンの分泌が不足するとうつ状態になってしまったり、逆に暴力的になったりしてしまいます。
こうしたことを防ぐために、適切な量のセロトニンの分泌が必要となるのです。
セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから生成される神経伝達物質となっており、気持ちを落ち着かせたり、感情を安定させる働きがあります。
また、ドーパミンやノルアドレナリンなど、他の神経伝達物質に対しても抑止的に働くため、過剰な興奮を止める働きがあることが分かっています。
セロトニンは気持ちを落ち着かせる働きのほか、以下のような効果効能があります。
・片頭痛を治す(太い血管を収集区させ、細い血管を拡張するため)
・ダイエット効果がある(食欲を減退させるため)
このようにセロトニンが分泌されると、体の機能を制御するように働きかけます。
ただし、セロトニンの過剰分泌は「セロトニン症候群」と呼ばれる不安障害などを引き起こすため、
適度にコントロールする必要があります。
また、過剰分泌によって、錯乱状態に陥ったり発汗や発熱といった症状もあらわれるようになるので注意が必要です。
その一方で、セロトニンの分泌が少なくなると行動や感情を落ち着かせることができなくなり、暴力的になってしまったり、あるいはうつ状態になってしまったりします。
特に、長期間ストレスにさらされる状態が続くと、不足状態になりやすくなってしまいます。
そのため、ストレスを軽減させるように、規則正しい生活を心がけたり、適度な運動をすることでセロトニンの分泌を促すことができるのです。
他にも以下のような脳内物質があり、それぞれがバランス良く働いていなければならないようです。
☆脳内麻薬βエンドルフィン
☆ 嫉妬をすると分泌されるエストロゲン
☆ ストレスを感じると生成されるグルタミン酸
☆ 愛や憧れを感じると分泌されるオキシトシン
人間という生き物の脳内物質の働きはとても複雑です。
その結果、人間という生き物の性質が他の動物と比べて複雑でめんどくさいものになっているような気がします。
脳内物質の役割は、人間の精神の恒常化とプロテクトであるように思われます。
これを薬などに依存して調整しようとしても、バランスが崩れてより大きな副作用に苛まれるような気がします。
本来の精神的な健康は、いかにナチュラルにこの脳内物質の働きに依存して生きて行くかにあるのかもしれません。