共通報告基準(CRS)強化により、米国へのキャピタルフライトが進む | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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OECD主体で進められているCRS(Common Reporting Standard)が普及することによって、米国の「世界最大のタックスヘイブン」としての価値がより高まり、オフショア地域から米国へのキャピタルフライトが進むという話しをしたいと思う。

但し、これはあくまで米国市民ではない米国非居住者に限ったメリットであると理解して欲しい。

共通報告基準(CRS)はG20主導で導入され、2014年7月のOECDの会議で承認された。

各適用国の税務当局は自国に所在する金融機関から情報を報告させ、他の適用国と年一回互いに自動的にその情報を交換する。

CRSにおいて、金融機関は定められた手続きに従って、金融機関は金融口座情報を交換するための報告を義務づけられ、さまざまな種類の口座や納税者が対象となる。

2014年7月21日に、OECDは「金融口座情報に関する税務における自動的情報交換基準」を公表した。

自動的情報交換は、金融機関がまとめた非居住者(海外居住者)の口座情報の内容を、非居住者の居住地国の税務当局に規則的に毎年送信することを義務付けている。

これにより、租税回避、特に税務当局が把握できていない過去の法律が遵守されていない情報の入手が迅速に可能になる。

100以上の適用国が既にCRSの速やかな導入をコミットしている。

このうち50以上の国が2017年より導入することを明言している。

これら「早期導入」適用国では、新規口座を開設する手順に2016年1月1日から従わなくてはならない。

CAA(権限ある当局間の合意)とCRSの公表は、クロスボーダーの税務コンプライアンスを改善するための各国政府の重要な構造的ステップと言える。

この制度は、米国の外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)や現在行われている自発的な情報開示と法的手続きなどの税務コンプライアンスの法律を基本的に真似たものだ。

ちなみに米国は既にFATCAがあることを理由に、CRSへは参加表明をしていない。

<2017年適用国(2016年分から報告):
アングィラ、アルゼンチン、バルバドス、バミューダ諸島、ベルギー、英領ヴァージン諸島、ブルガリア、ケイマン諸島、コロンビア、クロアチア、キュラソー島、キプロス、チェコ、デンマーク、ドミニカ、エストニア、フェロー諸島、フィンランド、フランス、ドイツ、ジブラルタル、ギリシャ、グリーンランド、ガーンジー、ハンガリー、アイスランド、インド、アイルランド、マン島、イタリア、ジャージー島、韓国、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、メキシコ、モンセラト島、オランダ、ニウエ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、サンマリノ、セイシェル、スロバキア共和国、スロヴェニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、トリニダード・トバゴ、タークス・カイコス諸島、英国(55の国・地域)>

<2018年適用国(2017年分から報告):
アルバニア、アンドラ、アンチグアバーブーダ、アルーバ、オーストラリア、オーストリア、バハマ、バーレーン、ベリーズ、ブラジル、ブルネイ・ダルサラーム、カナダ、チリ、中国、クック諸島、コスタリカ、ガーナ、グレナダ、香港、インドネシア、イスラエル、日本、クウェート、レバノン、マーシャル諸島、マカオ、マレーシア、モーリシャス、モナコ、ナウル、ニュージーランド、パナマ、カタール、ロシア、セントキッツ・ネイビス連邦、サモア、セントルシア、セントヴィンセント・グレナディーン、サウジアラビア、シンガポール、シント・マールテン、スイス、トルコ、アラブ首長国連邦、ウルグアイ、バヌアツ(46の国・地域)>


今まで多くの人々は、さまざまな投資商品や資産管理の手段を、米国以外のタックスヘイブン、オフショアのプライベートバンク、オフショアの金融機関を通して見つけようとしてきた。

最近まで、こうすることによって恐らくプライバシーや債権者のセキュリティーが、確保されていたと言えるが、パナマ文書流出事件にも見られるように、残念ながら、タックスヘイブンやプライベートバンクの信頼性や付加価値はもはや存在しないと言える。

実際にその流れは急変しつつある。

米国における手数料の仕組み、メカニズム、構造、それに関係する規則や手順の法的そして文化的な透明性が手数料を下げる結果となり、投資家たちに価値をもたらしている。

そして、OECDの共通報告基準(CRS)の米国版ともいえる、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)を米国が2010年に導入していることも重要なポイントかもしれない。

これをもって、米国はCRS加盟国の日本やその他100あまりの署名した国々との間で情報交換することに合意していない。

これらの事実を総合的にみると、特にUSドルベースの資産や投資を望んでいる場合は、投資家が投資を米国に乗り換えることを促すにちがいにない。