金融業界の正義 | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

Mr.Gの気まぐれ投資コラム

50代グダグダちょい悪おやじMr.Gの趣味と海外投資に関するコラムです。
香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!

先週、投資助言・代理業のアブラハムプライベートバンク、IFAジャパン、K2インベストメントがSESC(証券取引等監視委員会)から検査の結果、金融商品取引法上の投資助言業の資格範囲を逸脱した金融商品の販売行為が認められるという主論に於いて行政処分の勧告を受けました。


メディアでは、なぜかアブラハムプライベートバンクの件だけが一斉に取り上げられ、同業で同様のオフショア金融商品を販売していたとされるIFAジャパンとK2インベストメントに関しては、まったく取り上げられていません。


昨年末には、企業設計という助言の会社にも同様な行政処分勧告が出されて、財務局より業務停止命令と業務改善命令が出されていますが、これもニュースになることは全くありませんでした。


国内未登録の海外ファンドを実質的に販売している個人や、会社は有資格無資格を含めて無数にあると思いますが、販売や勧誘行為が認められる限りは、国内で如何なる資格を持っていようとも、未登録金融商品の販売は金融商品取引法違反になります。


もちろん、これは海外居住の個人や海外法人であっても、全く同じです。


海外に居住している個人であっても、海外法人であっても、日本居住者向けに広告や宣伝を打ったり、セミナーを開催したりして勧誘行為を行っている場合には、日本の業法に触れる可能性が高いと言えます。


日本の投資助言の会社が、純粋に中立的な投資助言だけを提供して食っていける訳はありませんから、なにか収益性のあるビジネスと組み合わせないことには現実的にはやっていけません。


巷の投資助言の会社で、海外ファンドの販売や仲介に関わっていなくとも、FXや株の自動売買ソフトの販売やそれを利用した違法な募集に関わっている会社も山ほどあって、財務局のHPを見れば勧告を受ける業者が如何に多いかはわかるはずです。


しかし、そんな中でなぜ、アブラハムプライベートバンクの件だけがこのように大きくメディアに取り上げられる事態となったのでしょうか?


冷静に考えてみると、異常な事態です。


一般的には、「TVなどで宣伝をバンバン売っていて目立ったから叩かれた」という見方をされていますが、それだけではないように思います。


そもそも、TVや雑誌、新聞など大手メディアに金を払って広告を出していた広告主なわけですから、もうちょっとメディアからは優しく取り扱われてもよさそうなものです。


有名人を起用した、「いつかはゆかし」の大胆な宣伝戦略があったが故の話題性は否めません。


おそらく大手の広告代理店経由で大手のITマーケティング会社が仕掛けていたであろう裏ネットマーケティングが、やまもといちろう氏など、プロのブロガーのブロガー魂に火をつけてしまい、見事な炎上を見せてくれたという身から出た錆的な側面もあります。


実際問題として、このようにアブラハムを取り上げた記事を私が書くことすら、未だに抵抗があります。

「なにか否定的な意見を述べるとすぐに削除依頼が弁護士を通じてくる」という話を聞くと、普通の人間は恐ろしくて何も意見を述べられません。


このように、公然の事実としてメディアに取り上げられた後ならば大丈夫だろうということで、疑問や不満を持っていた誰もかれもが一斉に悪口を掻き立ててフルボッコにするといった有様になっているのも仕方ありません。


しかし、テレビのニュースであれほど取り上げられるレベルのネタではないような気がします。


背景にあるのは、この機会に政府としては日本居住者向けの海外ファンド販売ビジネスを根絶やしにしてしまおうという意図ではないかと勘ぐってしまいます。


覚せい剤撲滅のキャンペーンとして、のりぴー(酒井法子)の事件をメディアが徹底的に報道してクローズアップしたときと感じが似ています。


アブラハムは、最初から今に至るまで、徹底的な自己の正義を主張し続けてきました。


投資助言の資格を持っている会社 VS 無登録違法業者という図式を作り上げ、国内に於いて投資助言の資格を持っている会社に圧倒的な合法性と正義があるという主張を展開してきましたし、当然のことながら顧問弁護士のアドバイスや、関東財務局とのすり合わせが行われていたことでしょう。


そもそも金融庁の見解として、ビジネスの実体性をどう見るのか?というところは疑問であり、投資助言業の海外ファンドビジネスとの関わりに於いて、アブラハムスタンダードとも呼べる奇妙なガイドラインが敷かれていたかのように見えましたが、最終的には手のひらを返すような裏切りともいえる金融庁の仕打ちです。


この話の正義はいったいどこにあるのでしょうか?


冷静に考えると、最初からどこにも正義など存在しないのかもしれません。


かつてのアブラハムにも、反アブラハムの同業者にも、金融庁にも、NISAを販売している国内の金融機関にも、それに関わるメディアにも、どこをどう取っても、投資&金融の世界にもともと正義など存在しないのです。


合法=正義という理論も今となっては詭弁に過ぎません。


合法と思われていたものが、違法であると変わったから、正義だったものが悪に代わったという訳でもありません。


違法であることがわかったからといって、それを知った顧客が、そこで契約したフレンズプロビデントやハンザードの契約を無効にして金を返せ!という意見にも全く正義を感じません。


フレンズプロビデントやハンサードは、ただの金融商品プロバイダーにすぎません。


もちろん、彼らにも正義はありませんが、会社の活動に違法性は全くありませんし、信頼のできる会社です。


これらの会社が提供する商品は、海外のファンドを効率よく組み込めるプラットフォームであり、それを利用することによって、有利な運用が展開できるというだけの事です。


武器メーカーが優秀な武器を作ったら、戦争が起こるから悪だ・・・というわけではありません。


仲介をする会社は、仲介をするのが仕事で、仲介手数料が主な収入です。


その収入を原資にして、顧客に対して適切なサービスを提供するのが仕事です。


いわゆる武器商人です。


武器商人にモラルも正義もクソもありません。


戦争があるところでは武器が必要とされるので、求められる適切な武器を提供するのが彼らの仕事です。


投資というものの本質が、この資本主義社会に於いて金融的な戦争の道具だとすれば、それを扱う関係者にも、投資を行う本人にも正義など存在しないのかもしれません。


あるとすれば、その武器を取って守るべきものがある人の大切な何かを守ろうとする心の中に唯一の正義が見いだせるかもしれません。


合法性に基づく正義を主張していたアブラハムの末路が、その事実を歪めずに伝えてくれることを望みます。