(ウォンバット目線)
最近「顧客目線」ということを改めて考えさせられる出来事がありました。
果たして、不動産など現物も含めた投資商品というものを取り扱う金融業界に、サービスの基本となる「顧客目線」という概念は存在するのだろうか?あるいは存在し得るのあろうか?
販売ということを考えると、ここには「営業目線」という概念も絡んできます。
一見、相反するように思われるこの「顧客目線」と「営業目線」は実は微妙にクロスするポイントがあるように思います。
それは、販売をゴールとして、「顧客目線」を戦略的に利用する際に、営業のひとつの技術として「顧客目線」が取り入られる部分においてです。
しかし、それは本来のサービスといった観点から「顧客目線」とは言えません。
金融業界には、この「営業目線」は確実にそして重く存在します。
しかし、国内未登録のオフショア金融商品に関しては、勧誘も販売もできない訳ですから、そのガイドラインにしたがっている限りは「営業目線」とは無縁であるはずです。
「顧客目線」というのは、モノを売るための営業現場に於いても、重要な事であると一般的には言われますが、それは「顧客目線」で営業すると、成約時の顧客の満足度が高かったり、関係が長く継続したりするということで、「顧客目線」を優先するばかりに、最終的にはものを売らないという選択肢は営業にはありません。
金融業界というのは、すべからくコミッション(手数料)によって成り立っていますから、契約が成り立たなければ何のビジネスにも金にもなりません。
ですので、面白味も何もない「金融商品」というモノを販売するために歴史上この「営業目線」に基づいた販売の技術開発は徹底的に行われてきたと思います。
保険業界に於いて、トップセールスマンと呼ばれるMDRTやTOTの称号を持つ人たちは、その道のエキスパートと言えるでしょう。
しかし、そのようなエキスパートであっても、「売ってはならないもの」を売らなければならない状況では残念ながらその能力を発揮することができません。
では、日本国内の巷にあふれかえっている国内で合法的に勧誘も販売もできる商品について、そのエキスパートたちがそれを販売するにあたり、本来の「顧客目線」というものを少しでも持っているのか?といえば疑問です。
仮にあるとすれば、それは「営業目線上の顧客目線」です。
どういうふうにすれば相手がそれを買いたくなるか?という心理戦術を、彼ら営業のエキスパートは完全な「顧客目線」で分析しつくしているのです。
原点に返って冷静に考えてみると、サービスという観点で見た「顧客目線」が金融業界で必要と思われる場面は、問題が起こった時の「クレーム対応」の時だけのような気がします。
しかし、その場面においても、投資の世界には「自己責任」という殺し文句がありますので、損をしようが騙されたと思おうが、買ってしまったものは「自己責任」ですから、特に国内の業法で守られた金融機関といくら揉めたところで、そこに「顧客目線」を求めることはできないでしょう。
業法によって規定されたガイドラインさえ守っていれば(守ってなくとも)、「顧客目線」の対応など必要とされないのです。
ガイドラインに従って、商品を販売することが、至上命令ですから、その結果顧客がどのような目に遭おうが、その組織の一員である以上は、それに従わなければ未来がありません。
それを生き抜いたものだけが、その世界に居続けることができるのです。
顧客の満足や幸せよりも、政府の定めたガイドラインの死守が重要です。
そのルールの中で、より多くの商品を高度な営業戦術によって販売したものだけが生き残れる厳しい世界なのです。
これは究極の「アンチ顧客目線」と言えます。
その高度に洗練された「顧客目線」をも取り込んだ「営業戦略」に我々は慣れ親しみ、蝕まれて、感覚は完全に麻痺していると言えるでしょう。
前から言ってはいますが、そもそも保険や投資商品、売られて買うものではありません。
あなたが、本当に必要と感じるものを自分で求めるべきものです。
この金融の世界に於いて、本当の意味で「顧客目線」に立ったサービスを提供することは困難です。
なぜなら、殆どのケースに於いて、「それはやめておいた方が良いのではないでしょうか?」と言わなければならないからです。
それでは残念ながら商売は成り立ちません。
しかし、「営業目線」を持たないサービスマンが「顧客目線」を持って対応するということは、金融業界においても実は非常に重要な事だと感じざるを得ません。
金融の世界において、コンサルティングという部分が本当に重要だとすれば、それが無ければ所詮インチキ商売になってしまうからです。
はたして、「営業目線」を徹底的に排除しながら「顧客目線」を育て、しかもビジネスとして成り立つ(売り上げが立っていく)というビジネスモデルは金融業界おいて幻なのでしょうか?