「借りた金は返せばいいってもんじゃない」。この言葉が重かった。確かにATMから借りたお金を競馬で倍にしてから返すのは、犯罪だ。
いろいろなお金にかかわる事件があり、人間模様があり、原作の小説とは少しストーリーが違っていたが、面白くて考えさせられた。
原作では失踪してしまう西木雅博が主役で、大活躍だった。西木雅博演じる阿部サダヲさんが実に芸達者で、いい味を出していた。ただ、西木の最後の「倍返し」はある意味詐欺まがいのことだ。九条馨支店長と石本浩一に倍返しできたが、後味はあまり良くなかった。そのおかげで西木は、連帯保証人としてのヤミ金の取り立てからは救われたのだが・・・。
百万円着服して架空融資を行った滝野真が自首して、刑務所から出所して家族に迎えられる場面は、本当に感動した。競馬のためにATMから一千万円借りた黒田道春が、ショップの店長としてやり直したことにも救われた。
石本浩一役の橋爪功さん・沢崎肇役の柄本明さんが、老練でずる賢い老人を、ベテランの味を出した演技で上手に演じていて脱帽した。