約2年半ぶりに映画を観た。数々の映画賞を総ナメにした「ドライブ・マイ・カ-」。私は村上春樹さんの小説が好きなので、原作の小説も2回読んだ。原作の小説は短編小説だが、映画はそれをかなりふくらませて重厚な作品へと仕上がっていて、感動した。「ドライブ・マイ・カ-」収録の短編集『女のいない男たち』の中の小説「シェエラザ-ド」や「木野」のエピソ-ドも投影されていた。また、多言語で上演する演劇というのも斬新だった。
たとえ夫婦であっても、相手を完全に理解することは不可能だ。妻が他の男性と関係をもっていたとしても、夫への愛情が無かった訳ではないだろう。生かされている者は、その生を最大限に全うしなければならない。そんなことを考えさせられるスト-リ-だった。高槻の逮捕という絶望から立ち直り、家福が「ワ-ニャ伯父さん」の劇で主演のワ-ニャを熱演するシ-ンには感動した。会話と手話が交互する終末は最高だった。映画のラストでみさきが、家福の赤い車を運転させて犬と共に韓国のス-パ-で買い物をするシ-ンが、意味不明だった。みさきも過去の傷から立ち直り、目に病のある家福から車を譲り受け、ユンスのつてで韓国に渡り、再出発したのだろうか?
家福役の西島秀俊さんの苦悩と爆発の演技は圧巻だった。高槻役の岡田将生さんの、家福と妻への思いを語る場面は迫力があり、小説の高槻のような軽さは感じられず重々しかった。みさき役の三浦透子さんの雰囲気とタバコを吸うシ-ンは、原作のイメ-ジとぴったりだった。
いろいろ考えさせられ、勇気づけられる秀作映画だった。