- 正史 三国志〈2〉魏書 2 (ちくま学芸文庫)/筑摩書房
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魏の武帝曹操は、蜀の劉備や呉の孫権よりも遥かにスケールの大きい人間であった。
彼には乱世を生き抜く知力とバイタリティー、決断力があり、さらに人を引 きつけ受け入れる磁力と
度量があった。
文武両面の人材を擁しえた所以である。
本冊には「魏書」第七から第十三まで、すなわち曹操初期のライバル、呂布や陶 謙、曹氏一族の武将、
曹仁・曹洪や夏候淳、知識人の名ブレーン、鐘ヨウらの伝を収める。
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(ジャンル・・・史料)
恐らく荀彧の卒論の絡みで全8巻中最も触れる機会が多かった一冊。
呂布や公孫瓚、陶謙、張魯といった後漢末の群雄達。
また、夏侯惇を始めとする夏侯一族、曹仁等の曹一門の将軍達。
荀彧を始めとする参謀系・文官系の人物達の列伝を収録しています。
呂布の列伝に一騎打ちの話が殆ど出てこないとか、
横山光輝三国志だといまいちパッとしない陳登が孫策の軍を撃退していたとか、
色々驚く場面はありましたが、読んだ当初一番ショックだったの
は公孫瓚と夏侯惇の列伝かもしれません。
公孫瓚、横山光輝三国志だと主人公・劉備と何かと縁がある事もあり、
良い人的な印象があります。
ですがこの正史を読んでみると、とんでもない…結構な梟雄ですよw
若い頃は容姿端麗にして頭脳明晰、声も大きくて弁舌爽やかだったとか。
先頭きって騎馬隊を率い北方異民族を駆逐と颯爽とした印象を受けます。
ですが後半は
袁紹が董卓に対抗して擁立しようとした皇族を処刑。
優秀な配下にはパワハラを加え、仲良くするのは凡庸な金持ちのみ。
最終的には要塞に引き篭もって部下を見捨てて自滅と良いとこ無しです。
また、夏侯惇。
何かにつけては曹操にくっついて行動しているんですが、一般的な猛将という
印象は本書からは感じられません。
呂布を攻撃した際、敵兵を捕虜にしたらしいんですが、夏侯惇は隙をつかれて
その捕虜達の人質にされてしまうんです。
結局部下の一人が
「将軍(夏候惇の事)一人の命の為に大事を誤る事は出来ない」
と言って攻撃を仕掛け事無きを得た上、その部下は曹操から
「君の判断は正しい」
と褒められるんです。
この時、夏侯惇が何と言ったかは記されていません。
内心どう思っていたのか気になるところです。
参謀陣の列伝は演義や漫画と然程大差ないかもしれません。
魏の陣営に属する人達は演義や横山光輝三国志等で悪く・弱く描かれる事が
多い気がするんですが、夏侯惇は史実の方が情けない珍しいパターンですね。