ヒロシは、アメリカの政治と文化にハマッテいますが、今回は本の紹介です。
アメリカでは、「ヒルビリー」というのは田舎者の蔑称なのですが、この本ではアイルランドから来て主にケンタッキー州やウエスト・ヴァージニア州に住み着いた低層の労働者階級の白人のことを指しています。トランプ大統領の最も強い支持基盤と重なります。
この本を読むきっかけは、「アメリカ副大統領になったヴァンスって何者?」という疑問からでした。そして、そのエレジー(哀歌)とはいったい何なのだろうか?
分かったことは、ヴァンスという人は、このプアーホワイトであるヒルビリー階級から上位1%以内に位置するようなアメリカの超エリートに一代で駆け上がったしまった人物ということです。
今でいう親ガチャに敗れた子供の悲惨な生活の中から、それでも自らの才覚と努力と判断、運も揃いふつうでは叶わないようなアメリカンドリームを果たす半生記でした。
ラストベルト地帯はグローバル経済のあおりを受けて製造業が衰退し地域全体は地盤沈下してしまいました。それなのに、かつてのプライドは残っているので移民者や黒人とは一緒にされたくないという歪んだ心が政府への敵意に向かったり公からの支援の拒否にも繋がっているようです。
子供たちもそうした無気力な大人だらけの中で育つため、勉強をおろそかにしたり、ドラッグにはまったりして学歴も得られず貧困の連鎖が起っているようです。ヴァンスも例外ではなく、薬物中毒で暴力的で男を次々に変えるような生活を送る母を持ち大変な苦労を重ねますが、そんな中でも教育に理解を示す祖母らの支援もあり、一族や周辺でも一人もいない大学入学を目指します。
彼は、州立大学に入るのですが、その前に海兵隊にも志願してイラク戦争にも従軍します。そこで初めてたたき込まれた社会性と体力も手伝って努力を重ね、おそらくかなり優秀な学生たちが願っても叶わないであろう名門大学であるイェール大学のロースクール(法科大学院)に入学します。そこには、今までの生活とは全く違うエリートという種族の世界が待っていたのです。そして、副大統領まで出世してしまうのです。
この本では、日本人がよく知らないアメリカの下層の労働者階級のことが手に取るように分かり、なぜ、あんな超金持ちの不動産屋で別世界に住んでいるようなトランプの支持者になったのかがよく分かります。一言で言うと、今まで「自分たちのことを振り返ってくれる政治家などほとんどいなかった。どうやらあの人は初めて自分たちのことを考えてくれているようだ」ということに尽きるのです。
ヴァンスは、両方の階級のことをよく分かっています。だからといって、そのことと効果的な政策を打てるかは全く別物でしょう。ヒルビリーにとっては、かえって良くないのではないかと思われるような政策を次々打ち始めたトランプとの関係にも課題があるでしょう。
以上がこの本を読んでヒロシが感じたことです。
最後に、1998年に哲学者リチャード・ローティが出した本の一説も紹介しておきます。これは、トランプ旋風の予言の書だともいわれているようです。
「・・・高給取りや官僚、ポストモダンのインテリといったエリートたちの思うとおりには社会を運営させないというメッセージを発する指導者が突然現れ、労働者の怒りのはけ口として求心力を持つようになるだろう。その時、アメリカ社会は過去40年間の成果を失い、マイノリティや女性の権利などが一気に後退していく・・・」