オードリーの若林正恭さんによる『ナナメの夕暮れ』(文春文庫)を読みました。
雑誌『ダ・ヴィンチ』に連載していたエッセイをまとめたものですが、本書は若林さんが〈不惑前・結婚前〉に書かれたものである事がミソ。
ナイフのように鋭利でヒリヒリとした心情の吐露に心揺さぶられつつ、合間に飛び出してくる箴言に唸ります。
例えば、微塵も興味のなかったゴルフを練習した時のお言葉…
「試すってすごく楽しいことなんだ。
何かがうまくいく喜びには、それまでうまくいかない苦しみが必要不可欠だ」
…と云うのは、どのジャンルにも通ずるものです。
若林さん曰く“耳が痛いことを言ってくれる信頼できる人”2人に「今のぼくに“こうした方が良いよ”って言いにくいけど言いたいことってあります?」と聞いた時…
「若林は結婚した方がいいね」と云われたそうな。人によりけりかもしれませんが、納得の一言かと。
若林さんが、お亡くなりになった前田健さんに初めてお会いした時に云われたお言葉が痛烈。成程、凄いお方でした。
「心の中で他人をバカにしまくっている、正真正銘のクソ野郎なのである。
その筆頭が、何を隠そう私である。
ぼくの場合、高校を卒業してから物事に対する価値下げは加速していった。
大学でサークルに入ること。
学園祭に本気で取り組むこと。
海外に一人旅に出ること。
告白すること。
何でも“みっともない”と片付けて、自分は参加しなかった。
価値下げによる自己肯定は楽だから癖になる」
「2009年は『センスがある』と言われる芸人さんになることを夢見ていた。
センスなど、取るに足らないものなのに」
「ネタをやっている最中に、後ろで見ている先輩が『絶対伝わらないでしょ』『裏だな(裏笑いのこと)』と揶揄しているのが聞こえた。
この国で非実力者が出る杭になろうとすると、風当たりが強いのは幼稚園の時からのお決まりだ(外国のことは知らないけど)。
そして、出る杭として成功済みの実力者に対する態度はいつも甘い。
その方法論にすぐに倣おうとする(全世界でそうなのかもしれないけど)」
「世界の見え方は、どんな偉人であれ、悪人であれ、思い込みに他ならない」
…悩みに悩んで戦ってきた方のお言葉が、切なく胸に突き刺さる事請け合い。
青春小説の香りが高い本書、アナタも是非☆