〈文藝春秋〉さんから出たばかりの中村文則さんの小説『私の消滅』を読みました

古びたコテージの狭い部屋に佇むひとりの男…何者かはわからない…机の上に置かれた手記を読みはじめると、そこには驚愕の事実が…ってな物語


読む側にとてつもないエネルギーを強いる作品ではありますが、その代わりに素晴らしい読書体験をも味わわせてくれます。
中盤辺りから、頭がフニャフニャになる事請け合い

「え~っと…オレがアイツでアイツがカレで…ところでアンタ、誰だっけ?」みたいになります

当たり前ですが読者の皆様、それぞれにご意見やご感想がございましょうが、個人的な感想は…「やってきた事やされてきた事を全て受け入れつつ生きていかなければならない」です。
最も響いた箇所は…
「今私が考えてるのは、人生の中で起こる悩みや矛盾や葛藤のあれこれだ。私はもう、そんなあれこれから遠い場所にいる。
ただ、少し懐かしかった。まだ自分がこの世界の一員であった頃。この世界の一員に、なんとかなろうとしていた頃。
そのような想いには、確かに小さな温度があった」
…此の部分だけ引用すると訳ワカメでしょうが、読めばきっとアナタにも響く筈です。
川本真琴の愛の才能に…間違えた、同い年の天才の才能に打ちのめされながらもパワーを得た王ちゃんでした
皆さん、是非ご一読ください
それから、もうひとつ…
あとがきで泣いてしまったのは、不覚にも初めてでした…中村文則と云う男の懐の深さに脱帽です。
