『足ることを知るということが、自分には出来ない。自分は永遠なる不平家である。
どうしても自分のいない筈の所に自分がいるようである。どうしても灰色の鳥を
青い鳥に見ることが出来ないのである。道に迷っているのである。夢を見ている
のである。夢を見ていて、青い鳥を夢の中に尋ねているのである。』
森 鴎外 作 『妄想』
森鴎外が軍医として日露戦争にかかわったことは有名です。そして、このこと
により、医者である鴎外と、文学者である鴎外との比較を、我々は無意識に
行っています。
医者が先か、文学者が先か、ということのほかに、この『妄想』を読むことで、
鴎外が哲学に深い興味を抱いていたことがわかります。紹介のことばなど、
いかにも自身の行動・思考の基準を求めて苦悩している様子が覗えます。
明治の偉人の一人といっても良いこの人物について、いろいろな年表と照ら
し合わせながら『妄想』を読んでみることで、これまで知らずにいた鴎外の
人となりに気づかされます。
![]() |
山椒大夫・高瀬舟 (新潮文庫)
529円
Amazon |