不可解や理不尽といった言動について考えるヒントを与える『真実一路』 | 上質なことばで名作を楽しもう

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『―うちあけなかったのは、ただ隠しているのではない。そこには、
事実を越えた大きな真実があるのだよ。事実を語ることは、だれに
でもできる。が、真実で押し通す事は、そうだれにでもできること
じゃないよ。』
                             山本有三 作 『真実一路』
 
 
読み終わったとき、自分としてはどうにも整理のつかない内容に困惑しました。
登場人物のひとりひとりが、なにかこう殴ってやりたくなるような性格・性質ばかり
で、もしかすれば、それこそが作者の山本有三が意図したものなのか?と、
推測するほどです。
 
人間とは、人間相互の影響・干渉において、反射的に不可解な行動や考えを
持つことがあります。でもほとんどの場合は、平凡に共感したり、同情したり、
いくらか反発したり、といった反応ではないかと考えます。
 
自分がこれまでの人生で経験してきた不可解さや理不尽さについても、もしか
したら、文中にあるように、真実を押し通そうとする人の強い意志表示に直面
していたのではないか?と、長い時を経たことで、考えるようになりました。